続・幻想奇譚 4 宿命 最終話

Posted by 松長良樹 on 02.2011 0 comments 0 trackback
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 私はこれを読み終えたとき、白痴のように天井を凝視していた。しばらく驚きのあまり、身体を動かすことさえできなかった。恐怖と愛憎のもろ刃の剣を喉元に突き付けられたような、なんとも遣る瀬無い思いが胸に突き上げてきた。が、しかし、私には彼女とこれっきりなんてとても辛く、忍び難いものであった。
 もう一度沙代子をこの胸に抱きたい。そして私は毅然としてこうも思った。 あんな夢の為に死ぬものか、断じてあんな妄想の為に死んでたまるものか。そしてあらゆる方法を講じて彼女を探そうと心に決めたのである。


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続・幻想奇譚 3

Posted by 松長良樹 on 01.2011 0 comments 0 trackback
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 祐一さん。本当にごめんなさい。心からごめんなさい。あたしが突然いなくなって、さぞ驚かれたことでしょう。すごく怒っているかもしれませんね。でも人一倍臆病なあたしには、逃げてしまうことしか出来なかったのです。そして今すべてを明かすことがあたしに出来るせめてもの罪滅ぼしだと思うのでこれを書いています。
 この手紙はあなたが寝てしまってから書いています。そしてあなたが起きる前の早朝にあたしは電車に乗って遠くへ行くつもりでおります。伝手がないわけがでもないのでどうぞ心配はしないで下さい。あなたを嫌いになったのでも何でもないのです。いえ、好きだからこそ。

続・幻想奇譚 2

Posted by 松長良樹 on 28.2011 0 comments 0 trackback
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 あいにく彼女は文学にはあまり興味はないらしかったが、その艶のある外見に似ず、私の話に合わせるように気を遣っているのがよくわかった。なぜだろう? ああ、なんという素直な優しさだったろうか。
 なぜか島崎のあの時の驚いたような、まずいぞと言いたそうなあの顔を私は覚えている。
 しかし、彼女が時折り見せる遥か彼方を眺めるような、なんとも儚気な視線もまた私の心を変な具合に時めかせてしまったのである。


続・幻想奇譚 1

Posted by 松長良樹 on 27.2011 0 comments 0 trackback
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 妻が失踪して久しいが、私は今も妻の事を想っている。それにしてもなぜ彼女は私の許を去ってしまったのか? その真相を明かす前にもう少し妻の沙代子について語らねばならないと思う。
 妻に初めて出会ったのは今からおよそ十二三年も前のことで、私は大学を出て製薬会社に入ったものの、なにかこう仕事が面白くなく、おまけに上司と馬が合わず、一年で会社を辞めてしまってから後の事だ。今考えると少し惜しい気もするのだが、その時は後先顧みずの幼い性格が私には残っていたのだろう。
 そして私はまた夢を捨てきれなかった。私の夢は物書きになることで、それまでにも何度か各誌の文学賞などに挑戦しては敗れていた。しかし、諦められず投稿は続けていたし、高校、大学の頃から書き溜めたものを出版に持ち込んだこともあるくらいだ。

幻想奇譚 後編

Posted by 松長良樹 on 12.2011 0 comments 0 trackback
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 その円柱は私の頭の両側に固定され回り続けた。そして床に沈んだ砂金のような光の粒がゆらりと揺らめいて私の頭上正面の一点に集まりだしたのだ。
 その時気づいたのだが、その時点で私を取り巻く風景は暗黒の無限の広がりを備えていた。窓も、戸も壁さえもがいつの間にか消滅していた。家がなくなったと表現しても間違いではない。しかしそれどころではなく、もっと重大な事が目前に展開されたのだ。

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