夢魔の作家

Posted by 松長良樹 on 26.2012 0 comments 0 trackback
475455588.jpg

仮面の作家

 その作家のペンネームは仮面の魔人と言って誰も作家の素顔を見たものはなかった。彼の手がける分野はおよそ広範囲で純文学から、推理小説・伝奇・ホラー・ミステリー・サスペンス・SF・エッセー、果ては童話にまで至った。特に傑出していた分野は推理サスペンスやホラー、歴史ミステリー等であり、年齢も経歴も不詳で数々の文芸新人賞を掻っ攫い、いきなり文壇に躍り出てベストセラー作家の仲間入りをしてしまったのである。全国の書店には彼の書籍が堆く積まれていた。破竹の勢いで彼は人気作家になったのだ。しかし彼は素顔を知られるのを忌み嫌った。理由がわからないから世間は色々な想像をめぐらしてその正体の憶測をする羽目になった。実は救いがたい醜男であるとか、顔に大きな痣があるとか、密入国者であるとか、実は小人であるとかその噂の枚挙にいとまがなかった。実際彼はテレビ出演を嫌っていたし、稀にテレビに出ても黒い頭巾を頭からすっぽりと被ってインタビューに応じるという実に風変わりな作家でもあった。頭巾と言うのは黒い円錐形の布で目のところだけが空いているものだ。

スポンサーサイト
 HOME 
▲ top