世界

Posted by 松長良樹 on 30.2015 0 comments 0 trackback
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 ――すべてが終わろうとしていた。

 世界が消滅しようとしていた。
 人間と言う人間が正体不明な疫病にかかり、死に絶えて行き、人類の輝かしい歴史に終止符が打たれようとしていた。

 人類最後の男がいた。しかし彼の目は霞み思考さえが曖昧となった。
 そして彼は思った。自分がいなくなった時にもこの世界は、果たしてあるのだろうか?

 世界が自分の認識の中にあったとしたら、自分と相対的に存在するものだとしたら、自分の死は世界の死ではないだろうか?
 ああ、誰がこの地球を地球としてとらえてくれるのだろうか?
 そう思うと途方もなく寂しい感情が男を責め苛んだ。

 そんな折、陽だまりに一匹の蜥蜴が現れた。夏の暑さの中で蜥蜴は勢いよく走った。小さな昆虫を見つけたのだ。
 
 男がついに息を引き取ったとき、蜥蜴の感じた光と熱と空間こそがこの世界となった。

                                         end
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