青い瞳のエミーナ 12

Posted by 松長良樹 on 02.2011 0 comments 0 trackback
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 ――西条はステッキをついていた。
 やや片足を引きずるような個性的な歩き方をする。ステッキのハンドルの部分にブラックダイヤが埋め込まれてある。パイプの部分は黒色であった。
「残念だがこれは脅しじゃない。本気だよ高林君」
 男の顔には異様で鬼気迫るものがあった。高林は一瞬呼吸するのも忘れそうになった。胸が高鳴り早鐘を打ち鳴らす。
「ふざけてる。なんて無茶苦茶な話だ」
 思わず高林も感情的な言葉になっていた。
「大丈夫だ。高林君お膳立てはみんなこっちでやる。君はただ消音器付きの銃の引き金を引けばいい」
「なぜ自分達でやらないんです」
「リスクが大きいんだよ。もし失敗したら我々の組織の存在まで知られてしまう可能性がある」
「そ、そんな勝手な話なんてありますか」
「奴は悪党だ。社会の害虫だよ。保守党の政治家や官僚の中にも奴の息の掛かった連中が沢山いるんじゃ」
「僕に暗殺なんてできっこないですよ」
「いや出来る。成功したらエミーナを君に進呈するよ。飽きたら捨てたっていい」
 高林は頭の中が混乱して言葉さえ容易に出てこなかった。
「奴の名は甲田源三という。政治がらみの贈収賄事件、犯罪疑獄のほとんどに奴が絡んでいると言っても過言ではない。闇のドンだよ。奴は企業から金を吸い上げるのが得意でな。それを政界にばらまいて又を力をつける。あくどい奴じゃ、それに決定的なのが……」
 西条がそこで咳払いをした。
「奴は核を作ろうとしている。それも秘密裏にじゃ、CIAの連中が調べてくれたよ」
 高林はただ呆然として西条の話を聞いていた。
「しかしエミーナは何でまた公衆トイレになんかに居たんですか。おまけに裸なんかで?」
 高林は神妙な顔だ。
「あの時はエミーナを運んでおった。その時わしの仲間は国の諜報部に感ずかれたのじゃ。トイレにエミーナを隠し、ダミーのエミーナを連れて逃げたが捕まって二人とも消されたよ。とんだドジだ。運よくエミーナは見つからなかった。そこに君が居合わせたんだ」
「じゃあもうエミーナの情報は洩れていたんじゃありませんか」
「ああ。エミーナをつくるのに時間が掛かりすぎたんじゃ」
「だからわざと僕を…」
「いや、最初からそのつもりじゃないさ。君がエミーナと関わったからこうなったんだ」
 高林の顔色は冴えなかった。思考停止のような表情だ。状況整理だけで頭が一杯だった。
「了解したかね。高林君」
「……」
「やらないと二人の人間が死ぬ。そして新たな案が練られる。ただそれだけだ」
「あなたにそんな事をする権利などない。仮にやったとして僕とエミーナの命の保障がどこにありますか」
「わしを信じる意外にはないな。おまえはエミーナを抱いた。蜜月の夜を過ごしたじゃないか。エミーナは男にとっての最高の女だ。そういう風につくられた」
「だからって」
「君は報酬を先に貰ったんだよ。仕事をしなければならない」
「そんな、勝手な言い草なんてありますか……。なんでこんな事をするんですか。教えてください」
「わし達は法に代わって悪を裁く世界的な組織じゃ。我が党員たちは法の手の届かない所に居る奴らのあらゆる悪事を調べ上げる。そして分析し判決を下し。有罪なら暗殺される。正義の鉄槌をこの世にはびこる悪人共の胸に打ち込むのだよ」
「おかしいですよ。酷い時代錯誤だ。あなたは普通じゃない」
 高林がそう言った途端に、男のステッキが高林のわき腹に食い込んだ。高林が苦痛に顔を歪めてその場に蹲った。ステッキの先端で突き上げられたのだ。強烈な一撃であった。
「忘れるな君は捕虜のような者なんだ。わしに対等な口をきくな」
 高林がくやしそうな眼で西条を見上げた……。


                                つづく
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