恨めしや

Posted by 松長良樹 on 02.2011 0 comments 0 trackback
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 着物の女が橋を渡り柳の下を通りかかると、生暖かい風が襟元に吹き付けた。
 なんだか湿った、重苦しい空気を感じる。彼女が幾分早足になり、柳の下を一気に通り抜けようとした瞬間、それはそこに忽然と現れた。
 髪を振り乱し、青白い陰気な顔に白装束という出で立ちだ。
「恨めしや、おお恨めしや」
 驚いた女は
「あーれーっ!」
 と叫び、気絶でもしたかと思った途端に女の首が伸びた。
「おまえさん。いきなり出てきてびっくりするじゃないの!!」
 女は怒っていた。
「幽霊が霊界に出てどうすんのさ。幽霊は人間界に出なさいよ」
「そうだよね……」
「あたいが轆轤首(ろくろくび)だから良かったけど、鬼にでも見つかったら地獄に連れて行かれるよ」
「ああ、でもなあ」
「どうしたの? 」
「おいら人間に殺されたから人前に出るのが怖いんだ」
「しょうがないねえ。しっかりおし」
 その幽霊は落ち込んだ様子で橋の下に消えていった。

                   おしまい。

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