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青い瞳のエミーナ 15

Posted by 松長良樹 on 05.2011 0 comments 0 trackback
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 その殺風景な部屋の中で高林は何度もエミーナの夢を見た。
 高林の頭の中でエミーナがあどけない罪のない顔で微笑んでいた。エミーナが拷問されそうになった時、高林は自分の身を切られるような思いがした。
 もはやそれは記憶を無くした、頭の変な娘への同情などではなかった。知らぬ間に高林はエミーナを好きになっていたのだ。何とも切ない気持ちが自分の中に湧き上がってくる。
 エミーナのことが気になる。心配だ。言い知れない慕情が高林の胸のうちに募った。
 それから長い時間が流れた。なんどもパンとミルクが運ばれてきた。時々フルーツも添えられていた。
 ある時ドアが不意に開くと逆光のなかに黒マントを羽織り、ステッキを持った西条が立っていた。まさにダリのような出で立ちである。横に家政婦のような中年の女がいた。
「高林君。今夜はパーティーだ。おめかししてもらうよ。風呂に入って髭をそれ」
 例によって鋭い眼光だ。不敵な笑みを浮かべている。
「むりですよ。銃なんて扱ったことさえ僕には無い」
 高林が懇願するように男に言った。
「誰でも最初は銃など撃ったことなんてないさ。そうだろ。肝心なのはやる気だよ。人生においてもっとも大事で重大なものだ。前向きな気持ちのみが現状を打破する。前に進むんだよ。勇気を持って行動するんだ。君は英雄になろうとしているんだよ。うじうじするな高林君。甲田は悪人だ。正義の鉄槌を打ち込むんだよ」
「正義? 人殺しのどこが正義なんですか。僕には関係の無い話ですよ」
「いいかい高林くん。君なら出来るよ。仕事がすんだら又エミーナと毎日極上のセックスを楽しめるじゃないか」
「どうせ僕は捕まるんでしょう。僕は殺人罪で死刑ですか」
「暗いねえ。考え方が。君は捕まらない。我々が付いてるんだ、逃げられるようにする」
「……」
「甲田は今夜パーティーを開く、金集めのパーティーじゃよ。エミーナが甲田をうまく誘い出すからそこを後ろから君がズドーンだ。いや実際には音はせんがな」
「エミーナについてもっと教えてください。いったい彼女はどこの国のなんという名の娘なのですか?」
「余計なことは詮索せんほうがいいぞ。身の為にもな」
「でも知りたいんです。彼女に過去の記憶はもうないのですか?」
「彼女には過去はない。過去の記憶は邪魔なだけだ」
「しかし、なんでまた手間暇かけてこんな真似をするんです。単純に考えたって時間とお金がかなり必要でしょうに……」
「これは一つの壮大なプロジェクトの一部なのだよ! 組織は今、最も信頼できる工作員を多数作り出そうとしている。彼らは敏捷で忍耐強く何物をも恐れない忠実なる正義の下部だ」
「可愛そうなエミーナ……」
 高林が呟くと、西条が鷹のような目をして尚さら大きな声を出した。
「彼女は、実人生より、よほど有意義で価値のある人生を生きているのだよ。そして高林君、君もこれから歴史さえ変えかねない任務を遂行しようとしているのだ!」
 高林はまったく無表情でその言葉を静かに聞いていた……。


                               つづく
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