スポンサーサイト

Posted by 松長良樹 on --.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

青い瞳のエミーナ 16

Posted by 松長良樹 on 06.2011 0 comments 0 trackback
32155.jpg

 澄んだ大気にシンデレラの見上げたような夜空が貼り付いていた。
 肌寒い夜風がタキシード姿の高林の頬に当たった。緊張と焦りで高林の顔は硬直していたが誰もそれを気に留めるでもなかった。
 心理学でいうところのマイナスとマイナスの葛藤である。人殺しなんて嫌だが、エミーナが酷い目にあわされるのも嫌だ。高林は苦汁を飲ませれたような思いの渦中にいた。冷や汗が首筋を流れる。
 しかし夜の月は異様な情念をはらむように蒼く、それがなぜか記憶の中のエミーナの身体の香しい匂いと混ざり合って、なんとも切ないほどの苦悩を高林に強いていた。

 そこはホテルの中庭だった。大きさから言って一流ホテルに違いなかったが、どこの何と言うホテルなのかも高林には判らなかった。
 目隠しをされ、それを外されたのがこのホテルのロビーだった。横に西条が立っている。濃紺のスリーピースの上から黒マントを羽織りステッキをついていた。
「いいか。高林君落ち着け。チャンスは一回だぞ。上着のうちポケットに銃は入っている。ここに来る前、射撃の練習をしたはずだ。至近距離だから外す事もあるまい」
「……」
 押し黙った高林に西条の語調が強まった。憎々しい表情だ。
「わかったのか高林君」
 西条の瞳の奥に妖火が燃えたつようだ。
「はい」
 高林が元気なく答えた。
「いいか何回も説明させるな。エミーナが甲田をおびき出すから、君は柱の影でじっと待て。そしてタイミングを見て撃つんだ。念のために三発撃て。必ず奴の息の根を止めるんだ。撃つ箇所についても説明済みだ」
「本当に逃げられるんですか。心配で……」
「大丈夫だ。奴のボディガードもすぐには追ってこない。仲間が奴の死体を隠すから時間を稼げる。とにかく奴をやったらホテルから出て指定の場所に行け。車が待っている。いいか走るなよ。怪しまれる」
「やるしかないようですね」
「当たり前だ。やるしか君に進路はない。それとエミーナの事は気にするな。別々に逃げるんだ」
「どうして?」
「万が一のことを考えての事だ。二方向に逃げたほうが捕まる確率は少ない」
「捕まるって、逃げられるんじゃないんですか」
「甘い事を言うな。100パーセント安全な暗殺など無い。我々の仲間は毎日何人も死んでいる。世の中には眼に見えない戦争が存在するんだ」
「戦争ですか」
 憂鬱そうに高林が前髪を持ち上げた。
「そうだ戦争だよ。わかったら奴の顔を拝ませてやる。確認しておく必要がある。さあ行くぞ」
 そう言って西条は漆黒のマントをひるがえした。ステッキの黒ダイヤが鈍く光っていた……。


                               つづく
スポンサーサイト


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://kitunosuke8.blog33.fc2.com/tb.php/107-76f7cabd
▲ top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。