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青い瞳のエミーナ 18 最終回

Posted by 松長良樹 on 08.2011 0 comments 0 trackback
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 エミーナの手を取り勢いよく駆け出そうとしたがドレスの裾が邪魔で思うように走れ無い。高林が力任せにドレスの裾を腰から引きちぎった。廊下を抜け中庭を突っ切る。エミーナは恐怖に駆られた顔をしたがすぐに高林に従った。覚悟をした眼をしていた。
「誰か来い。おーいやばい奴がいるぞ!」
 甲田が気が触れたように叫んだ。高林を追ってきた黒人のボディガードが襲い掛かろうとした。その時始めて高林の持つ銃が火を噴いた。
 黒人の脚に命中しその場に倒れこんだ。走った。とにかく全力で走った。エミーナも矢のように走った。無我夢中であった。
 中庭からフロアーに進みエントランスまで来た。
 そこには西条が立ちふさがっていた。二人のサングラスの男もいた。
「高林!失望したよ。君がそんな腰抜けだとは思わなかった」
 マントをひるがえすと真っ赤なマントの裏が見えた。
「君はもうお終いだよ。何の価値も無い。死ぬんだ」
 懐から銃身の長い銃が抜かれた。高林に照準が合わされた。後ろを振り返ると大きな図体のもう一人の黒人が、高林を捕らえようとエントランスに駆け込んできた。他の者もいてもう逃げられなかった。
 高林が意外にも落ち着いた顔をした。何かを悟ったような表情だ。
「俺には人は殺せない」
 噛み締めるように高林が言った。穏やかな口調で語りだしていた。エミーナを見つめている。
「エミーナ、君が好きだよ。俺は君がいつの間にか本気で好きになっていたんだ。心の底から君が愛しい。君が何者であったにせよ、関係ないんだ。ありがとうエミーナ…… 君との二ヶ月を俺は決して忘れないよ」
 高林がゆるく微笑んでいた。銃口を自分のこめかみにゆっくり持ってきた。
 エミーナはそこにただ立ちすくんでいた。瞳に涙が潤んでいた。しかし、すぐにその涙の中に毅然とした鋭い光がきらめいた。
 次の瞬間、いきなりエミーナが高林の横腹を蹴り上げた。強烈な前蹴りだった。高林が前のめりになるとエミーナが高林の身体を中庭に放り出した。
 今までのエミーナからはまるで考えられない動きだった。超人的な力だ。高林の銃をエミーナが取った。そして自分の首のチョーカーを引き千切って高く投げ上げた。スローモーションのような光景であった。異次元の出来事のようであった。
 弧を描いたチョーカーが重量によって落下しようとした時、銃口が火を噴いた。ルビーに命中したのだ。               
 辺りの全てが無音になった。時間が静止したような世界だった。その中でエミーナは自分の身体を跳躍させた。中庭に見事に身体が跳んだ。
 西条があんぐりと口をあけた。開けたままだった。周りの人々の視線が呆然と宙をさ迷っていた。
 閃光が走った。眩いばかりの白色だった。ホテルの窓という窓が内側から吹き飛んだ。爆発を超えていた。周りの事物が一瞬にして蒸発してしまいそうな熱風が吹き荒れた。
 ――轟音がその後から続いた。
 
 爆風の中に白い手があった。その手が高林の腕をしっかりと掴んだ。朦朧とした意識で高林がその手を握り返した。
 母のような手であった。天使か神かそれ以上のものの手であった。高林が起き上がった。そして生き返ったように走り出した。
 
 ――エミーナの瞳は青く、透き通るように青く輝いていた。
 
                            了

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