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氷上の物語

Posted by 松長良樹 on 13.2011 0 comments 0 trackback
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 ――薄い氷の上に釣り人がいた。
 氷に穴をあけてワカサギ釣りである。寒いから男は懐にカイロを入れていた。しかし待てど暮らせどなかなかワカサギはかからなかった。
 もう一度糸を引き上げて、ワカサギが掛かっていなかったら寒いので帰ろうと思ったとき、変なものが糸に付いてきた。よく見ると卵である。
 しかしもピンク色の卵である。
 不思議そうに男がその卵をしげしげと眺めていると、突然その卵が割れて中から変な者が出てきた。小さくて黒いものだ。
「あたし魔女!」
 それは耳元でそう叫んだ。
 男が目をこすってよくよく見ると小人のような少女である。衣装はカラスのように黒かったが、顔は雪のように白かった。
 男はあまりの事に腰を抜かしそうになった。
「き、君だれ?」
「あたしは魔女の子」
「魔女? 妖精でなく?」
「そう、あたしのお父さんは悪魔」
「な、なんで……」
「なんでって言われても困る」
「そう。で、なんで釣れたの?」
「うふふっ。あたし冬眠してたの冷たい湖の底で」
「卵に入ってかい?」
「悪い?」
「いや、別に悪かないけど」
「あなた金貨欲しい?」
「金貨?」
「そうよ。あたしお父さんは悪魔で、ある時、壺に入って寝ていたらあなたみたいな釣り人に釣られたんですって」
「へえ。で」
「でねえ、その人が金貨が欲しいっていうから何枚も出してあげたそうよ。でもその人欲が深くって、もっともっとって言うからお父さんは沢山金貨を出したそうなの」
「すごい、その人は儲けたねえ」
「ところが……」
「ところが?」
「ところがその金貨の重さで氷が割れてその人水死」
「可愛そうに、欲に目がくらんだんだね」
「そういうこと。で、あなた金貨欲しい?」
「なにかい? 君も金貨が出せるの?」
「もちろん!」
「だったら金貨をたくさん出してよ。僕も欲しいもの」
「氷が割れるまで?」
「ああ」
「あなた正気? ここの氷は薄いのよ」
「ああ、僕は氷が割れても平気さ」
「な、なんなのその自信。あなた自信過剰家?」
「いや、僕はただのスーパーマン」
「な、何言ってるの、頭おかしいの?」
 女の子が笑い出した。
「いや、本当さ。でなかったらこの薄い氷の上で釣りなんて出来ない」
 男は真面目な顔のままだ。
「でたらめよ!」
 男は、はにかむような笑みを浮かべ上着を前から開いて見せた。少女は目を疑い、食い入るように男を見つめた。男の胸元には、あのSのマークが燦然とかがやき、筋肉質の身体に密着するような青いボディースーツを着ていた。
「凄い、凄いわ、本物なのね!!」
 少女が感嘆して大きなため息をついた。
「なんでスーパーマンが金貨を欲しがるの?」
「自分の為じゃないさ。貧しく恵まれない子ども達にランドセルや、文房具を送ってあげるためさ!」
「もしかしてそれを児童養護施設に……。しかも伊達直人名とかで」
 スーパーマンはただ黙ってウインクした。
 女の子の瞳がまるで恋する乙女のように輝いて、まっすぐにスーパーマンを見つめていた。

 ――おしまい。としたいところだが、この話には後日談がある。

 魔女の子は金貨を沢山だし、スーパーマンに渡したのだが、これがなんと偽造金貨と判明し、あえなくスーパーマンは硬貨偽造の罪で警察に捕まってしまったのだ。
 服役中のスーパーマンのもとに魔女の子は毎日あらわれ、力ずくでの脱獄をそそのかすのだが、そこは堅物のスーパーマンのことで、断固拒否しているという。
 これというのも魔女の子のせいなのだ。しかしこうなると悪魔の子の口車に軽く乗ったスーパーマンの自己責任ともいえるので、いやはやスーパーマンにとっては、とんでもない年の初めであった。

                  今度こそおしまい。

 この話は星新一氏の「悪魔」のオマージュであります。そこに時事ネタを+してみました。作者より…

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