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つぼみ

Posted by 松長良樹 on 19.2011 0 comments 0 trackback
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 突然めまいがして立っていられなくなる。周りの風景が幻影のように霞んで、渦巻状に流れる。いきなり機上からジャングルにでも突き落とされたような、現実と非現実の狭間に吸い込まれるような感覚……。
 ある時良治は不意な立ちくらみに襲われて倒れた。学園の校庭だったので直ぐに保健室に運びこまれ救急車が要請された。
 病院で意識がようやく回復したとき、良治の手の甲に小さな新芽が吹き出てきた。まったく異様で、最初はその芽を手でむしり取ったが、またすぐに次が発芽した。このところ良治は熱っぽく体がだるくて仕方がなかったのだが、まさかこんな奇病が襲い来るとは夢にも思わなかった。
 医師は頭を抱えて難病だと告げ、精密検査をして様子を見るしかないと言った。高校一年の秋の出来事である。 
 入院をした。しかし一夜明けてみると、驚いた事に体のあちこちから葉が伸び、良治は半分木になっていたのだ。どんな薬も治療も役にはたたなかった。少年を襲った奇病として報じられた。
 それからしばらくして、家族や医師の見守る中で彼は病院の外にふらふらと歩き出した。医者が止めようとしたがものすごい力で弾き飛ばされた。
 そして良治は病院の中庭にどっかと腰をおろし、根をはってしまったのだ。なす術もなかった。数日後には彼は一本の木になってしまっていた。

 それから随分と月日がたった或る時、宇宙から流星群が世界中に飛来した。恐ろしいことにその星屑の中には未知のウイルスが存在していた。感染した者の細胞は瞬時に老化してしまうのだ。人々は死の老人病に侵され、ばたばたと死んでいった。ワクチンも間に合わず、ほとんど全ての人間が数ヶ月で死に絶えてしまったのだ。

 その時になって良治の木につぼみが出来た。そして花が咲いた。大輪の真紅の花である。そして花が落ちるとそこに大きな実が生りはじめた。細長いとても大きな鞘のような実でやがて人間ほどの大きさに肥大してそれは弾けた。

 ――そこには裸の良治が凛々しい顔をして立っていた。
 瑞々しい瞳の彼はすでにウイルスに対する抗体を持っていた。

 そして良治は決心したように歩き出した。とても力強い歩調である。
 彼はきっと悟っていたのだ。もう一本不死の木があり、そこから自分の最愛の人が今、誕生したことを……。


                                おしまい。

           
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