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ある修験者の足跡

Posted by 松長良樹 on 20.2011 0 comments 0 trackback
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 ここに一人の密教の修験者がいた。霊山に篭り荒行に明け暮れる、いわゆる修行僧であった。顔つきはあくまで猛々しく、彼の眼には不屈の忍耐力が宿っていた。
 若い彼は修験道を極める為、あらゆる修行を自らに科した。
 ――断食、巡礼、禊(みそぎ)。

 そして厳しい修行の中で彼はいつの間にか人体浮揚の術を会得していた。
 それは全く異質な力で、特殊能力とも呼んだ方が当たっていて、修行の成果というより、修行がきっかけとなったと言った方が近かったろう。

 ある時、彼は修行僧達を集めてその術を披露した。彼は以外にも目立ちたがり屋だったのである。
 印を結び瞑想するように彼が眼を閉じると、彼の身体はゆっくりと宙に浮き上がった。
 最初はぎこちない浮揚であったが、徐々に落ち着き皆に感嘆のどよめきが巻きおこった。
 しかしそれも束の間であって、彼は側にある大木に吸い寄せられようにぶつかり、気絶してしまったのだ。まるで木の幹に叩きつけられるようであった。
 彼にすれば木にぶつかる気などはさらさらなかった。
 地球が回っただけだった。


 彼の浮遊術は空間の一点に自分の身体を固定すると言うものだった。したがって猛烈な回転速度を持つ地球が彼を置いて行ってしまったのである。

 彼は随分へこんだようであったが、その件の後、山を降りて一時易者をやっていたらしい。しかし極めて暇で、いつも中島みゆきの『時代』を口ずさんでいたと言う。
 ♪まわるー まわるーよ 時代はまわるーっ♪

 最近聞いた話だが今彼は『流転』とい題名の小説を書いて新人賞を狙っているそうである……。

                      おしまい。

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