もしも……

Posted by 松長良樹 on 24.2011 0 comments 0 trackback
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 もしも、これはもしもの話です。あなたは若く優秀な方で優れた体力、知力に恵まれた人間だと仮定させてください。男女の差はこの話にはあまり関係ありません。
 あなたの夢は宇宙飛行士でした。そしてあなたは苦労に末、ついに難関を突破しその念願を叶えました。そうです輝かしい栄光を手に入れたのです。
 人類の夢を担ったあなたは宇宙探査の為に宇宙船に乗り込みました。そして冒険の旅に複数のクルーと共に出発したのです。重大な任務です。
 最初は順調な旅が幾日も続きましたが、プレアデス星団を通過する最中、いきなりあなたの船は宇宙人に拉致されてしまったのです。
 勿論あなたはそれなりの覚悟をなさってこの任務に志願されたのですから、さほど慌てたり取り乱したりはしませんでした。あなたたちは立派でした。
 気がつくとあなたは広い荒野にいました。そこにあなたは一人で立っていたのです。他のクルーたちの姿はありません。
 遥か前方に何かがいてこちらを見ています。よく見るとそれは鬼のように恐ろしい顔をしていました。モンスターです。体長二メーターは優に超えます。
 そして空から宇宙人の声が響いてきたのです。
「地球人よ。よくぞここまで来てくれた。その功績は認める。ところで君と対面しているのはプレア人だ。文明の進み具合、体格、性格、知力、本能、その他、両者は実に似通っている。だからどちらが優秀な生命であるか判断がつきかねるのだ。したがってここで優劣をつけて欲しい。ここで決闘をしてもらって生き残った者を我が宇宙連邦のメンバーとして正式に認める。尚、戦いを拒否したものは弱者という烙印を押し、永遠に宇宙から抹殺する。一切の質問は勝負がついてから受け付ける。今はただ戦うのだ」
 あなたの心臓は早鐘を打ち鳴らし、逃げ出したい心境に陥りました。こんな理不尽な話なんてありましょうか。しかし逃げられません。頭の良いあなたは今の言葉をプレア人もプレア人語で聞いていたのだろうと察しましたから、穏やかではありません。
 やがて格闘になりました。プレア人は怪力です。力では歯が立ちません。両者に与えられた武器は小ぶりのナイフのみでした。何度もナイフがあなたの体を掠めましたが、あなたはしぶとく戦いました。そして柔術の心得のあるあなたはついにプレア人を関節技に決め、その場に這わせたのです。
 もはやあなたの勝利は決まったも同然でした。
「さあ、とどめを刺しなさい人間よ」
 宇宙人の声がしました。しかしあなたはここである話を思い出したのです。SFの古典です。まったく同じシチュエーションでその話はこう展開していました。
 地球人には良心があり結局相手を殺せなかった。と、それを見た宇宙人は人間には慈悲や優しい気持ちがあるのを知って宇宙連邦のメンバーとして認めてくれた。そう、これは宇宙人達の仕組んだ試験であり、人間は合格したという話です。

  *  *

 しかし、この場合はどうでしょう?
 そんなに甘い話なのでしょうか。あなたは真剣に考えます。
 今すぐに決断しなければならないのです。どうしましょう。
 さあ、人類の未来を背負ったあなたはもう投げ出せないのです。
 あなたは深呼吸しました。そして天を仰いで、そして……。

                         おしまい。
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