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宇宙戦争 後編

Posted by 松長良樹 on 01.2011 0 comments 0 trackback
宇宙

 世界情勢が変っていった。まず国同士の争いはすべて休戦状態になった。彼らが現れたことで人間同士の絆はより強くなった。彼らは疑う余地のない絶対の悪であり、人間こそ絶対の善となった。誰もが地球の素晴らしさを想い、人間愛について再確認した。
 戦況が悪化するとこれまでいがみ合っていた国同士が友好を結び、我々は兄弟だと宣言した。
 全世界に彼らの悪逆非道ぶりがテレビ中継されると世界は尚も変っていった。世界の富豪たちは食事さえ出来ない貧しく、悲惨な人民に食料を配った。そして言った。「地球のために戦おう」と。
 ホームレスもニートも軍隊に志願して勇ましく戦った。彼らの脅威が身近に迫ると誰もが銃をとった。絶対に地球をまもるという信念が彼らを凛々しい人間に変えた。世情に不満を漏らすものが極端に減った。やくざや暴走族は英雄に変身した。

 そし全世界の国家予算の無駄は見事に省かれた。必要最小限の予算が計上され、人々は一生懸命に働いた。人間の勤勉さこそ最大の武器であり美徳であると指導者が訴えた。

 何年も続いた戦争であったが、戦況は人類に優勢に傾いていた。人間の精神力と地球や家族を身を捨てでも守ろうという気魂は、ついに彼らを打ち負かそうとしていた。

  *  *  *

 その様子を遥か天界から眺める者たちがいた。
 大きな城のような建造物が広大な草原の中に建っている。その中に彼らはいた。
 白い装束の神と呼ばれる存在と、人類の頭脳と呼ばれる人たちである。
「ちょっとやり過ぎだったのではないでしょうかねえ」
 利発そうな壮年の紳士が遠慮気味に神に言った。神は何も答えない。するともう一人の白髪の紳士が言った。
「まあ、確かに犠牲はありましたが、人間が一つに結束したのは歴史上初めてのことですよ。それに貧困も戦争も見事になくなったではありませんか、人類愛を私は初めて実感しましたよ。金持ちが自発的に貧乏人に食料を配ったのです。まさに奇跡ではありませんか」
「……でも、これは戦争ですよ。野蛮な戦争だ。それに彼らを追い返した人類はまた、元に戻ってしまうのではないでしょうか?」
「その時は又、彼らを復活させればいい。まあでもこの体制は当分崩れないでしょう」
「神様、これが最善の策なのでしょうか? なんとかおっしゃってください。神様」
 しかし神は腕を組んだまま遠い視線を無限の宇宙をすえたまま、ちょっと悲しい顔をしたものの、ついに一言も語らなかった。

                            おしまい。
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