救助

Posted by 松長良樹 on 08.2011 0 comments 0 trackback
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 この話は極めて残酷な話なのであるが、その残酷さが峻烈なものではない。それどころかともすると、不謹慎にほくそ笑んでしまう事さえ充分考えられる。
 ――宇宙人が実在したということ。そして人間はあまりにも彼らに慣れていなかった。
 ある時、思いも及ばない事が起こった。遥かな宇宙の彼方から宇宙船が飛来して街の公園の真ん中に墜落したのだ。あまりにおおっぴら過ぎて、しかも不意打ちだったから国もこの事件を隠蔽する暇さえなかった。
 すぐに情報をキャッチした優秀な科学チームが現場の調査にあたったが、残念な事に宇宙船は酷く破損していて、宇宙人と思われる生命体の身体は、その衝撃でばらばらに分断されていたのだ。
 宇宙人とのファーストコンタクトは、悲しいことに無残な肉片との対面になってしまった。しかし優秀な彼らのチームはそれ位の事では諦めなかった。
 生物学の権威であり、優秀な外科医でもあったチーム代表の張間博士は、宇宙人の身体の細胞は今だに死んでいない事を確かめ、その生きた体の復活を目論んだ。最新鋭の医療技術によって復元を試みたのである。もちろん世界の神の手を持つという外科医達が多数動員されたのは言うに及ばない。
 根気強い復元は行われた。まるでその作業は難解なパズルを組み合わせるようで、途方もない努力が要求された。しかし奇跡は起こった。その生命体、宇宙人はついにその身体を再生され、脈を打ち、呼吸を再開したのだ。
 チームが活気づき、歓喜と喝さいが彼らの間に巻き起こった。

 しかし、なぜか宇宙人は常に苦しそうで起き上がることさえ出来なかった。臨床の期間は驚くほど長期にわたり、医者達も生きた心地がしない期間が長く続いた。
 やはり宇宙人を完全に再生する事などできないのだろうか。
 医師達が諦めかけたちょうどその時だ。彼らと同種と思われる宇宙生命体の船が地球に着陸した。そして仲間の安否を気遣うように、どう調べたのかそれの居る科学基地にやってきたのだ。
 地球の科学者及び医者達はその時の恐ろしさを言葉には出来なかったろう。身の毛も弥立つとはまさに彼らの体験を言うに違いない。
 彼らはベッドに寝ている仲間の姿を見て気が触れたようにこう叫んだのだ。それも額にある不気味な口からである。
「ああ、何と言う事だ。彼の頭が逆に付いてるぞ!」

 彼らは幸いな事に人間を恨んでいない。人間の誠意を感じとって事故であることを理解したのだ。不幸な事に彼は間もなく死んでしまったが、彼らは遺体を持って宇宙に消えていった。
 それ以来二度と彼らは姿を現さないし、政府は事の詳細を公開していないので、様々な興味本位のニュースが流れたものの、いつしか誰の記憶からも消えてしまった。


                      おしまい。


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