Posted by 松長良樹 on 23.2011 0 comments 0 trackback
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 あるとき会社から家に帰ると鬼が部屋の中に座っていたのでびっくりして身が竦んでしまった。
 どうして鬼だかわかったかと言うと、毛むくじゃらの太い腕と原始人みたいな皮の服を身に着けていたからだ。なにより決定的なのが頭の角だった。
 慌てて逃げようとしたが、俺の家から俺が逃げるなんてる理屈に合わない。
 呆然としたまま、しばらく俺は鬼の様子を見ていたが別段俺に危害を加える気はなさそうだった。少しだけ安心し俺は夕食の支度を始めた。
 鬼はテレビを見ているだけで手伝ってはくれなかった。俺は悩んでいた。鬼の分も作るべきなのだろうか……。
 そんなことを考えるなんて人が良いのにもほどがあるぞ。俺は自分にそう言い聞かせて自分の分だけ作ろうとしたが、鬼が俺も飯が喰いたいと勝手なことを言うので仕方なく俺は二人分の食事を用意した。コロッケとキャベツの千切りが今日のおかずだ。あとは漬物と味噌汁、それに納豆。鬼は黙々とご飯を食べご馳走様も言わなかった。 俺は少し腹が立ったが、なにも言えなかった。
 鬼は帰る様子もなく、畳に横になった。なんと鬼はそれから三日経っても帰らなかった。
 俺は困った。警察に連絡するのは簡単だが俺はなんとか事を穏便に済ませたかった。

 しかし三日目の夜、俺はずっとこのまま鬼にいられたらたまらないと思い、恐る恐るこう切り出した。
「どうして僕の家にいるのですか?」
 すると鬼はじっと俺の目を見つめた。意外ときれいな目だ。そして次のように言った。
「おめえさあ、この前の節分のとき一人で豆まきしながらこう言ったろ。福は外、鬼は内って!!」
「えええええええーつ! そんなこと言いましたっけ」
 俺にはそんなことを言った記憶がなかった。おかしい、鬼の勘違いじゃないのか。しかし、鬼の目はまっすぐに俺を凝視していて反論できる状況ではなかった。
 俺は仕方なく何度か鬼に謝り、「二度と間違えませんから」と言うと「まあ一度だから勘弁してやらあ」
 そう言って鬼はようやく家を出て行ってくれた。俺はそれ以来、決して豆まきをしなくなった……。


                           おしまい。
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