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続・幻想奇譚 2

Posted by 松長良樹 on 28.2011 0 comments 0 trackback
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 あいにく彼女は文学にはあまり興味はないらしかったが、その艶のある外見に似ず、私の話に合わせるように気を遣っているのがよくわかった。なぜだろう? ああ、なんという素直な優しさだったろうか。
 なぜか島崎のあの時の驚いたような、まずいぞと言いたそうなあの顔を私は覚えている。
 しかし、彼女が時折り見せる遥か彼方を眺めるような、なんとも儚気な視線もまた私の心を変な具合に時めかせてしまったのである。

 それから僅か三日後に私と彼女は伊太利亜レストランで食事をしていた。大きな窓から新緑の香る郊外の洒落た店であった。
 傍から二人の様子を見るものがいたとしたら、三日前に会ったばかりの者同士などに見えなったと思う。話をよく聞くと彼女は最愛の人を事故で無くして、ひどく落ち込んでいて、死にたくなって死にきれず、あの店に無意識に入ったというのだ。
 そんな重大な事を彼女は私に明かしてくれたのだ。私は女に酷く同情した。 そして何とか彼女を勇気づけたい一心で、まるで幼馴染のように彼女に語りかけ、細心の注意をはらって、なんとか彼女が明るくなれるような話題を提供できるようにつとめた。
 しかし、考えてみるとそれまでほとんど女性に縁のなかった私はかなり浮足立っていたのかもしれなし、彼女の儚げで幾分魔性的な魅力を心の底に、或いは脳の根幹に感じ取っていたのかもしれない。あのとき私には彼女を想う自分に酔うところがあったのである。

 私は翌年には親の反対を押し切り、氏素性のわからぬ彼女と結婚したのである。そして彼女は私の小説のよき支援者に、掛け替えのない支援者になってくれたのだ。
 彼女は懸命に働き私を支えてくれた。そして私も死に物狂いで執筆し、なんとか短編が雑誌に載り、少しずつ原稿料が入るようになってきたのである。
 彼女の魅力をここに書き連ねても無意味だし、かなり独り善がりなものになるから止めておく。まあそれはともかくとして彼女こそ私の妻である。今は私の許に居ない愛しい妻なのである。
 なぜ私に真相などが語れるのかというと、それは一通の置き手紙をなんと冷蔵庫の冷凍庫の奥に見つけ出したからに他ならない。すぐには目につかないがやがて何時かは目に触れる場所……。そんなところに手紙が忍ばせてあったのだ。
 私は読者諸氏に、そのまま手紙を公開してしまおうと思う。

                            つづく
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