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続・幻想奇譚 3

Posted by 松長良樹 on 01.2011 0 comments 0 trackback
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 祐一さん。本当にごめんなさい。心からごめんなさい。あたしが突然いなくなって、さぞ驚かれたことでしょう。すごく怒っているかもしれませんね。でも人一倍臆病なあたしには、逃げてしまうことしか出来なかったのです。そして今すべてを明かすことがあたしに出来るせめてもの罪滅ぼしだと思うのでこれを書いています。
 この手紙はあなたが寝てしまってから書いています。そしてあなたが起きる前の早朝にあたしは電車に乗って遠くへ行くつもりでおります。伝手がないわけがでもないのでどうぞ心配はしないで下さい。あなたを嫌いになったのでも何でもないのです。いえ、好きだからこそ。
 実はあたしは恐ろしい女なのです。なぜかというと、あたしと恋愛関係になった人は皆死んでしまうのです。ああ悲しい。本当に悲しい。あたしには死別した彼が三人もいるんです。
 そんなことまで隠していてごめんなさい。十七歳の時、好きになった人は自動車事故で死にました。
 次の恋人は首を吊り、あなたと会った時は三人目の彼氏が飛び降り自殺してしまったんです。あの時はさすがに自分は呪われていると思い、死のうと思っていたのですがあなたが優しい言葉で救ってくれたのです。あなたにはなんといったら良いのかわかりません。
 あたしを好きになってくれた人は、いつかあれを見るらしいのです。あれがなんだかあたしにもわかりませんが、あれの話をした直後に三人共死んでしまったのです。
 あなたがお話になった、あれです。あの時は内心、心臓が抉られるぐらい驚き、強い衝撃を受けました。どうにかなりそうでした。
 けれども ――あたし、その先を知っている―― 等と心と裏腹な事を言ってしまいました。きっと少し頭がおかしかったのかも知れません。
 実はあなたがいつもお変わりがないので、安心していたのです。あなたがいつも健やかで少しも夢の話などしないから……。
 それにしてもあなたとの十年はなんだったのでしょう。恨めしい思いさえしてきます。
 そして、恐れていたものが突然来たのです。ついにあなたまでもが、あれをご覧になった。今でも信じられない思いです。
 あなたの身に何が起こるか恐ろしいのです。ですから不幸の張本人であるあたしはここに居てはいけないのです。一刻も早くあなたから離れることがせめてあたしに出来ることです。本当にごめんなさい。
 ただ、一縷の希望があります。それはあなたの話の中で、輝く彫像があなたの身体に降りてこなかったということです。
 前の例ではみんな彫像が体に降りて身体を乗っ取られてしまうのです。あなたの場合は彫像が去って行ったと言いましたね。だから微妙に前例とは違うのです。だからあなたは助かったと信じたいのです。そう信じています。
 でもあたしがあなたの傍にいたのでは、またいつあれを見るかもわからず、怖くて傍にはいられません。
 さようなら、素敵な祐一さん。今までありがとうございました。あたしもどこかで独りでひっそりで生きていきますから、あなたもどうぞ気を落とさずに生きていってほしいと思います。
 そしていいものを沢山、沢山書いてください。心から、心の底からそう願っています。

                                     沙代子

                            つづく
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