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鼠の国

Posted by 松長良樹 on 27.2011 0 comments 0 trackback
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 あるところに鼠の国があった。いつ、どの時代にそんなものがあったのか詳しく話はできないが、この世界とは次元が違う世界だとひとまず考えてほしい。そこは人間には想像もつかない世界で、その国の鼠は濃いグレーの毛を持つ鼠と、白い毛の鼠とに別れ、双方とも決して仲良くせず、いつも戦っていた。
 それと言うのも国土の殆どが瘠せた土地ばかりで、食料の豊富な肥えた土地はごく僅かでその土地をめぐって戦争状態にあったのだ。
 グレーの鼠と白い鼠とを比べるとひと回りグレーの鼠のほうが大きく、仮に一対一で戦ったら殆んどグレーの鼠の勝ちであった。したがって白い鼠は数を頼んでグレーの鼠に挑むしかなかった。おのずと戦況はグレーの鼠のほうに傾いていった。

 グレーの鼠の大将は息巻いてこう言う。
「われらは神から選ばれた種族である。皆、白鼠どもに哀れみなど微塵もいるものか。奴らを根絶やしにすることこそが神の意思なのだ。こうやって弱いものは淘汰され、優れたもののみがこの世に繁栄する。これが真の平等なのだ!」
 それに呼応してグレーの鼠達は威勢よく喚声をあげた。
 しかし、いよいよ白鼠が窮地に立ったとき信じられないことが起こった。ある戦でなんと一匹の猫が白鼠に加勢したのである。マダラの猫であった。
 猫の国は隣にあると聞いていたが、未だかつて猫が鼠に加勢した事など一度たりともなかった。猫がギャウーッと声をあげると、グレーの鼠達の脚は竦んで動けなくなり、その隙に猫と白鼠は共闘で相手を切り裂いたのだ。
 こういう調子でその猫は一瞬に百匹ほどの鼠を退治してしまったのである。

 だが秘密を明かすと、この猫は本物ではなかった。白鼠の中に若く剽悍な兄弟がいて、その鼠が猫の張りぼてをつくり、頭からすっぽりそれを被っていたのだ。前脚には兄、後ろ足には弟といった具合に。
 皆はその作戦には大層驚き、感心した。それにしてもその猫の顔は実によくできていて今にも猫が動き出しそうに見えるのである。
 白鼠の王はすっかり感心し、兄弟を仕官に取り立てた。それからというもの戦況は逆転した。猫はいたる所で活躍し、いくさの度に相手をとことんやっつけたのである。

 マダラの猫の噂はグレーの鼠の中であっという間に広まり、皆がマダラの猫を恐れるようになった。悪魔の猫だとか。白鼠は魔物を操るとか色々デマが飛び交い始めた。
 白鼠側にして見れば、この秘密は絶対に敵に知られてはならず、猫に戦場で出会った敵はたとえ逃げようとしても、草の根を分けても探し出して殺した。
 しかし、グレー鼠の大将の率いる軍勢も死にもの狂いで戦い、戦争は長期化していった。
 あるとき数々の武勇伝を打ち立てた鼠の兄弟の前に、猫の張子を貸してほしいという若者が現われた。
 若者の目は輝き、手柄を立てたいという熱意に溢れていた。その頃にはもう兄弟も疲れて、歳もとっていたので快くそれを承諾した。

 ――最後の戦であった。
 人間界での関が原の戦いを彷彿とさせるようであった。グレー鼠の大将もこの戦いで負けたらグレー鼠は滅びると考えていたので、腹をくくりとんでもない作戦に打ってでたのだ。 
 今まで自分達を悩ませてきたあの猫を最初に血祭りにあげてしまえと言うのだ。とにかくあの猫一匹に何千という兵を差し向け、何が何でもあの猫を始末するという作戦であった。
 もし逃げようとしようものならこの総大将が叩き斬るという、恐ろしい命令でもあった。

 風が静かに平野に吹いていた。
 空を行く鳥たちはこれから始まろうとしている恐ろしい戦いに、はたして気づいているのだろうか。
 グレー鼠の総大将は喚声を上げた。
「者共、こころしてかかれ!」

 そんな事とは露知らず若い鼠は意気揚々と猫の張りぼてを被った。
 ――これで俺も仕官になれる。若い白鼠はそう考えているのであつた。


                            おしまい。
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