招き猫

Posted by 松長良樹 on 06.2011 0 comments 0 trackback
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 雄太の家は貧乏だった。父親はリストラに遭い、もっか失業中。母は病弱であまり働けず、兄弟は多いときている。 雄太は食べ盛りの中学三年生。下に三人。上に一人の五人兄弟だ。雄太は貧乏から逃れたかった。このままじゃ進学もできないじゃないか
 ――なんとか裕福になる方法はないものか。雄太は日夜それを考えていた。

 ある日、雄太は夢の中で神様に会った。ちょっと図々しいとは思ったが、僕を金持ちにしてください。とお願いすると神様は意外なほど素直に「はいよ」と答えた。
 貧乏していても初参りの時、お賽銭をけちらなかったのが功を奏したらしかった。
 神様は骨董屋で招き猫を買い、富めるものに向けて祈れば、そこから富を引き寄せてくれるじゃろうと言った。
 雄太は言われた通りにした。近くの骨董店に行き、招き猫を買ったのだ。招き猫にも特大の物から小さい物まであり、出来れば大きい物を買いたかったが、お金が乏しいので小さい物にするしかなかった。
 雄太はそれを日の丸銀行のほうに向けて置き、日夜裕福になることを願った。すると奇跡は起こった。
 まずなけなしの小遣いで買った宝くじで三千万円が当たった。雄太は全身に鳥肌が立ったが、無駄にせず、それを元手にして父や兄と協力して事業を興したのである。それは幸運の招き猫製造会社『福猫』設立だった。
 福猫でつくった招き猫は売れに売れた。全国から注文が殺到し、瞬く間に雄太は長者番付けの常連になってしまったのだ。なにしろ雄太は自分の体験をもとに骨董屋で買った招き猫そっくりのものをつくり、体験談を混じえてネットで販売したのだ。
 ――もう貧乏はやめましょうよ。のキャッチフレーズと共に……。
 わずか一年で雄太の家は二十階建ての高層ビルに生まれ変わっていた。
 
 それに引き換え、日の丸銀行の運命は悲惨であった。不良債権が重なり、預金者は激減し、倒産寸前にまでなってしまった。
 それからまた一年が過ぎるころ、おかしな事が起こった。福猫が急に売れなくなってしまったのだ。おまけに詐欺にあい、多額の資金を騙し取られてしまった。

 ――おかしい、どうなっているのだ。それに最近、日の丸銀行がにわかに活気づいているようなのだ。

 雄太は日の丸銀行の様子を見に行くことにした。そして驚いた。驚きすぎて腰を抜かしてしまったのである。
 なんと銀行の店先には、いつか骨董屋で見た特大の招き猫が雄太の家の方角に、でんと据えられていたのだった……。

                              おしまい。

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