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親切で善良な王

Posted by 松長良樹 on 07.2011 0 comments 0 trackback
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 あるところに小さな国があった。ファンタジー王国とでも名づけよう。
 その国王は不老不死だった。国王は苦心の末、魔法使いをうまくつかって不老不死の妙薬を密かに手に入れていたのだ。しかし国王は百年もすると、国民に自分の不老不死がばれるのを恐れて、王位を弟の譲り渡し、楽隠居を決め込んでしまった。

 弟が王位につくと国民はそれを祝福した。国はもともと豊かで争いもなく平和であった。
 しかし、この王はすこぶる親切で善良な王であった。
 なんとこの王は兄に無断で不老不死の妙薬を国民に配布してしまったのだ。悪気はまったくなく、ただ民の長寿と繁栄を願って……。

 兄はそれを知って烈火のごとく怒ったが後の祭りであった。

 最初、民はこの王に感謝し、なんと寛大な王だと崇めたが、いつしか事情は確実に変化していった。
 あれだけ勤勉で正直であった民は自らが不老不死となると、働く意欲をなくした。そして働らなくなった。ものを作らなくとも不老不死なのだから平気なのだ。
 田畑は荒れ放題で誰も働かない。朝から酒を飲んで寝転んでいる者も多く、道徳も秩序もめちゃくちゃになった。王は怒って働かぬ者を罰したが、死なない者に効果はなかった。

 民はあらゆる遊びに打ち興じたがすぐに飽きた。大体、我慢をするという事を民は忘れた。あらゆる場面で喧嘩が絶えまなく起こった。
 民はノイローゼになった。なにをやっても面白くないと言い出したのだ。

 みんなが不平に満ちた顔をして、仕舞いにはこう言い出した。
「この味気なさはいったい何なのだ! 何をやっても面白くないのだ! もう耐え切れない。こうなったのもみな王のせいなのだ!」
 民は叫んで城に押しかけた。クーデターである。
「王様! 我々を安らかに死なせてくだせえ!」
 王も負けじと叫んだ。
「わしも不老不死なんじゃ! わしゃもう死にたいよ!」

 *  *

 そのころ王の兄は南の島で美女をはべらせフラダンスを踊っていた。

                        おしまい。
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