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五次元の世界

Posted by 松長良樹 on 19.2011 0 comments 0 trackback
鬲比ココ_edited-1_convert_20110519223851

 夕陽にキラキラと輝く海辺の砂の中に、私は古びた青い瓶を見つけた。
 見れば中で何かが蠢いていたので片手でひょいと摘み上げ、栓をとると立ちどころに魔人がそこに出現した。私はあまりの不条理さに気絶しかけたが、なんとか持ち堪えて魔人を凝視した。白いターバン、アラビア衣装に金の刺繍も艶やかだ。
 魔人も私をかなり鋭い目つき睨んでいる。しばらく沈黙が続いたあと魔人が言った。
「願いを一つ叶えてやろう」
「願い……。 たしか願いは三つじゃなかったのですか?」
 私が恐る恐るそう尋ねると魔人は眉をしかめて言った。
「今のご時世では一つだ。節約の世の中じゃ」
「……?」
「なんでもお前の望みを叶えてやるぞ」
 私は願いが三つでない事に多少がっかりしたが、一つならとても貴重だと思って考え始めた。考えに考え抜く。
「まだ、決まらぬか?」
「す、すいません。もう少し考えさせてください」
「まあ、じっくり考えろ」
 魔人はそういって腕を組んで目を閉じた。私は月並みな願いは言いたくなかった。それというのも私は科学者であり、とうてい魔人など信じられるわけもないし、この事態を科学的に説明しなければならないし、通俗的な願望を想いながらも、心はそれと正反対になんとか魔人の存在を根底から覆すほどの願いを探しだそうとしていた。私は尚も考えた、そしてある奇抜なほとんど実現不可能な願いに思い当たった。
「なんでも望みを叶えていただけるのですね?」
「ああ、そうだ遠慮せずにはやく願いを言え」
「では、私を五次元の世界につれて行ってください」
「なに!」
 魔人の顔色が変わった。私は内心ほくそ笑んでいた。この願いは絶対に不可能だろう、かの理論物理学者リサ・ランドール女史は 異次元世界がわたしたちの3次元空間をとりまいく巨大な時空であるということを理論上、立証した。私は以前から次元というものに並みならぬ興味を持っていたし、リサ・ランドールによれば五次元の世界は存在するが我々には見ることはおろか、五感で認識する事などできないのだ。
 私は勝ち誇ったようにもう一度言った。
「五次元の世界に行きたいのです。五次元」
 魔人は少し考え込んでいたがやがて『わかった』というと、『目閉じて、俺が指を鳴らしたら目を開けて見ろ』と言う。

 私は言うとおりにした。目を閉じ、指の音がしたのと同時に目を開いた。そこはやたらと広い砂漠のようなところだった。
 そして私は目を見張った。なんとそこには五人の次元大介がいた。
 抗議したくても魔人の姿はもはやどこにもない……。

                           おしまい

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