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愛しき君を食す

Posted by 松長良樹 on 29.2011 0 comments 0 trackback
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 憂鬱な灰色の雲が垂れ込めた秋の日の事である。俺はなにか面白そうな本はないかと、神保町の古本街をさまよううちに、いつのまにか本屋街の外れまで来てしまっていた。
 そしてそこにまるで小屋のような粗末な古ぼけた古本屋があり、その奥の何冊も無造作に積まれた分厚い本の束の中に一冊の妙な表題の本を見つけて、なにかこう魂に冷たい刃物でも当てがわれたようなゾクッとする妙な感触におそわれたのである。
 なんと本の題名は『愛しき君を食す』
 ふざけたタイトルの本である。しかし時代を感じさせる表装がエキゾチックな雰囲気を醸し出ていて、俺は無意識に本を手に取ってくまなく観察した。そのとたんにノスタルジーというか、ある種の悲哀というか、形容のできない不思議な情動を胸に覚えたのだ。
 いったいこれはどういう訳だと思った。いくら古本漁りが嵩じたとはいえ、まだ本の内容を、いや冒頭さえ読みもしないうちから、どうしてこう怪しい陰鬱な気分になるのだろうか?
 俺はその答えを見つけるべく本をさらに詳しく観察した。題から察して猟奇もののミステリーか、オカルトか、どうせ三流小説だと踏んで作者を見れば有梨香とある。はて、そんな作家がいたものか? 俺は首を傾げて一ページを捲った。

 ――私がこれから記す悍ましい物語を決して無理をしてお読みにならないでください。
 きっとこれをお読みになったあなたは、私を酷く蔑み、どうしようもない変態女だとお思いになるに決まっていますから。 不快でこの本を床に叩き付けるかも知れません。
 でも、あたしは西条新太郎と新藤有梨香の愛の終極を、ここに書き留めておきたいのです。その愛がいかに奇抜で奇矯なものであったか誰かに知ってほしいのです――。

                          つづく
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