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愛しき君を食す 2

Posted by 松長良樹 on 30.2011 0 comments 0 trackback
 その悩ましい冒頭に興味をそそられた私はざっと見て、ぱたりとその本を閉じ、買って帰ることにした。私は官能小説でも読むつもりでその本を衝動買いしたのだ。店の主人は皺くちゃな顔をした老人で、本が売れたことを嬉しがる様子さえ見せなかった。「はい」だけが唯一老人のはいた言葉であった。
 そんなことは気にもせず、私は帰るとすぐ家の机の蛍光灯の下でそれを読み始めた。

 ――私はあの人を愛していました。そしてあの人もそれは深く私を愛してくれたと思います。でも蜜月はそう長くは続かなかったのです。あの人の事をお話ししますと彼は世間的な名声があり、というのも彼は青年の頃から野心家でIT関係の事業で成功して巨額な富をつかんだ人なのです。
 それに彼は大変な勉強家で特に科学や物理学に大変詳しく、また論文審査によって、博士号を取得した優秀な人間でもありました。弁も立ち、博識で世間的に信用されていたと思います。
 それに引き替え私、新藤有梨香の家は中流どころか、父が早く亡くなったので、大学に進学する事すら苦しい家庭でした。私は母と妹と三人で市営住宅で生活していたのです。
 私と彼が知り合ったいきさつは、彼の会社の事務員募集で偶々私が採用され、社長である彼が支店視察にやってきたとき、私がお茶を持って行ったのがそもそもの馴れ初めでした。彼はその時まだ若く、とても厳しい顔をした青年で悪く言えば鼻持ちならない態度で支店長を怒鳴りつけていました。
 だから第一印象はとても悪かったのです。でもそれから何回か会議などで彼に会っているうちに、私は社長室に呼びつけられたのです。
 私はきっと注意されるかなにかだと思っていたのですが、彼は私を夕食に誘ったのです。
 彼は人に有無を言わせないほど強い性格でしたから私は黙って頷くよりほかにありませんでした。彼は私を可愛いし綺麗だと言ってくれました。本当に驚きました。まさか彼が私に気があるなんて夢にも思っていませんでしたから。

                               つづく
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