愛しき君を食す 4

Posted by 松長良樹 on 01.2011 0 comments 0 trackback
「なーに、それ? 美味なの?」
 私はそう訊きましたが彼は答えませんでした。
「君もお食べ」
 彼がそう言いましたので私は好奇心に駆られ、それを食べてみました。それはお世辞にもおいしいものではありませんでしたが、私は彼の手前、さもおいしそうにそれを食べました。
 そしてもう一度これがなにかを訊きました。すると彼はそれが完全に私の胃袋に入ったのを確認してから小声でこう言ったのです。
「これは耳たぶさ、愛しい君のね」
 私は悪い冗談だと思いました。ブラックジョークなのだと思いました。そして私はこう言ったのです。
「あら、おあいにく様だけどあたしの耳はここにちゃんと二つ付いてるけど」
 すると彼は悪魔のような不気味な笑いを浮かべたのです。私は初めて彼のあんな顔をみて少し驚きました。
「君の左の耳たぶを強く引っ張ってごらん」
 私は一抹の不安をこの時初めて感じました。そして言われたとおりに耳たぶを強めに引っ張ってみたのです。するとボソッというへんな音とともに私の耳たぶが取れてしまったのです。
 私は絶句しました。そして慄然として彼を見つめていました。
「君の耳たぶは実に美味い。僕は夕べ君に麻酔をうち、君が知らない間に耳たぶをメスで切り取って代わりにイミテーションの耳たぶを付けておいたのさ」
 彼はそう嘯いたのです。背筋に冷たいものが這いまわりました。私は夢中で耳をまさぐりました、そして左耳に鈍い痛みを覚えたのです。そして指先に赤い血が……。
 私は突然、眩暈と吐き気に襲われました。同時に言いようのない憤りが胸にこみ上げてきたのです。そして恐怖と悪寒とで私の身は責め苛まれました。
                                  つづく
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