愛しき君を食す 8

Posted by 松長良樹 on 05.2011 0 comments 0 trackback
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 私は尚も思いました。私はもしかしたら最初から新太郎を愛してなんかいなかったんだ。彼の社会的な有能さや財力や、私への献身を……。そうだ! そういうものを私は愛していたんだ。だから彼に合わせて何を言われてもおとなしく彼の言うことをきいてきたんだ。ただ、それだけの事なんだ。
 ああ、献身的な純粋な愛とは最初から無縁! そう思うと今度は私は自己嫌悪に襲われました。そしてその愚かでいやらしい自分はきっと鬼神のような顔をして剣を握り締めていたのです。
「有梨香!!」
 そう叫んで新太郎が私を抱きしめようとしました。
 私はその瞬間に剣を容赦なく彼の喉元に突きたてました。血が吹き出して新太郎が倒れました。しかし私の怒りは到底治まりませんでした。私は尚も新太郎をめった刺しにしたのです。私は返り血でべっとりになりました。しかし私は尚も……。尚も……。

  *  *

 俺はそこで本を閉じた。まったく気違いじみた、猟奇的なこのばかばかしい話をこれ以上読む気が失せたのだ。不快感だけが俺の心に残る。この話には俺が期待したミステリー的なプロットも、謎解きの楽しさや閃きも皆無だ。
 俺は本を放り出し、気分転換に、また若干腹も減ったので地下室に降りて行った。そこには大型冷蔵庫があり、今夜の夕食が仕舞い込んである。今日の早朝、俺はうまく死体安置所に忍び込み、若い女のふくらはぎの肉を削いできているのだ……。

                         おしまい。


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