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売られていた地球 3

Posted by 松長良樹 on 31.2011 0 comments 0 trackback
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「しかし実力行使は好まない。我々もきっと彼らも。何かいい案はないものか」
 大統領の温厚さが現れている。
「残念ながら実力は彼らが一枚上ですね。それは遠い星からこの地球にやってきたことで既に証明されている。それに彼らは野蛮人じゃない。取りあえず正当論を持ち出してきているし、法の厳守こそが彼らの主義らしい」
 若い金髪の中将が意外に冷静な言葉を続ける。
「しかし、人間がほかの惑星に、他の世界に移住するなどという事は考えられないし、ありえませんよ。第一その技術も方法もない。移住できる星を彼らが提供でもしてくれるのなら話は別ですが。とにかくここを離れるなんてできないし、それはたぶん人類の滅亡を意味する」
「待ってください。ソドニックは善良で優秀な科学者ですよ」
 甲高い声で国連事務総長がそう言った。アジア人で恰幅のいい好男子だ。この席では彼こそが唯一ソドニックに面会した男である。
「そうだ。私は貴方にソドニックの事を詳しく聞きたかったんだ」
 と大統領が少し早口になった。
「あなたがソドニックに地球大使の称号を与えたのですよね。たしか」
「ええ、そうですとも。彼はその莫大な財産を投げ打って宇宙船を完成させた。できるだけ目立たないようにです。なにせ彼はこの地球には未だに物を食べることにさえ困っている人間達が存在する事実を憂いていました。だから自分が財産のすべてを宇宙船に投資してしまうのを後ろめたく感じていたんです」
「ほう、善良な人なのだね。ソドニックは」
「そうです。そしてソドニックはユートピアを目指して五年前に船出した。彼は出かける前に関係者に人類にとって貴重な宝探しの旅に出発すると言い残しました。だから私はソドニックを祝福する意味で地球大使の称号を贈ったのです。心を込めてね」
 それに鷲っ鼻の国防長官が不機嫌な顔で嘴をつっこんだ。
「閣下、ソドニックは気違いですよ。いかれているんです。奴は若いときに精神病院に五年も居たんですよ。奴は売国奴ですよ。国賊だ。なにが善良であるものですか」
「なんだ、長官もソドニックが地球を売ったと信じているじゃないですか」
 と金髪の中将。
「……」
「とにかくソドニックを探すのです。ソドニックに大至急会わなければなりません。そして彼から宇宙人に詫びさせるのです。それしかないでしょう」
「閣下、お言葉ですが、あのしたたかな宇宙人がもし彼が直々に売買契約は嘘だったと言っても、容易に引き下がるでしょうか? 到底そうとは思えません。なんやかや理屈をつけて地球をよこせと迫りますよ。きっと」
「じゃあ、他にどうしろと言うのです、長官!」
 さすがの大統領も声を荒らげでそう言った。
 その後も勿論議論は白熱したが、結局しまいには互いに罵り合う始末でこれと言う名案も解決案も出ぬまま会議は終結した。そして近々に緊急国際会議の招集が余儀なくされる運びとなった。大統領としては現状打開案を出せなかったのが恥ずかしく残念でもあった。肩を落とす大統領。その背中に金髪の中将が声をかけた。
「閣下、お察しします。因りによって大変な時期に就任されていたものです」
「そんなことはいいから、君は自分の職務を誠実に遂行してくれたまえ」
 大統領はそう言い残して職務室に去った……。

                        つづく
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