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Black Dog 3

Posted by 松長良樹 on 21.2011 0 comments 0 trackback
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 雅志は海岸沿いの路肩にカマロをゆっくりと停車させた。しばらく指を噛んで考えにふける。そして懸命に最良の策を考える。
 ――とにかくこの車を始末しなきゃならない。そして車を誰かに盗まれたとでもいえばいい。この車を処分しないと危ない……。
 その時である。背後に不吉な気配を感じて無意識に振り返り、雅志は頬を引きつらせた。あの犬がこっちに向かって駆けてくるのだ。なんという恐ろしいスタミナであろうか。とうに10キロは走ったというのに巨犬には疲労の色さえ見えない。
 蒼白い月光の下でその犬はその双眼に赤い血の色を帯びた魔性の獣だ。
 ――なぜだ! あの犬はなんだ! 化け物か!――
 雅志は開けたばかりのウインドウを閉め、再びカマロを走らせた。
 急加速して犬を振り切るつもりが今度は犬が底知れない瞬発力を見せた。なんとその魔犬はぐいぐいとその距離を縮めてきたのだ。赤い舌は横に流れ、白い牙が光った。
 カマロは全速力で滑走した。かなり走るとそこにトンネルが現れた。岸壁をトンネルが貫いているのだ。暗い闇に両者が呑み込まれる。バックミラーには血走った巨犬の顔だ。
 オレンジ色のライトの線が消えるとトンネルを抜けた。と、どうだろう。そこは見たこともない異界だった。
 まるで別世界の幕が上がったみたいに巨大な紫色の月が空を覆っていた。空には黒雲が掛かり湖底のように静かで怪しい世界だった。
 雅志は暫らく絶句した。その異界の風景の中にまで巨犬は執拗に迫りくるのだ。あいにく彼にはその魔界の風景を眺める余裕などなかった。とにかく犬から逃れたかった。その一心が雅志の全身を支配していた。
 尚もカマロは走り続けた。世界が後方に吹き飛んで行く。しかし犬は無尽蔵なスタミナを誇っていた。その双眼は無機質で冷酷な機械のようだ。

 やがてカマロが長い上り坂に差し掛かると、エンジンに異音がはしった。シュルシュルとエンジンが情けない音をだして泣いた。ガス欠である。雅志は給油しようと思っていたところで事故を起こしたのだ。脳髄に昏い絶望感が忍び寄った……。


                           つづく
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Category : ホラー


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