Black Dog 4

Posted by 松長良樹 on 22.2011 0 comments 0 trackback
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 ――ちくしょー!!―― 
 雅志はハンドルを数回叩いた。すると目も眩むような朝日が突然彼の眼をさした。いつの間にか夜が明けていたのだ。
 車が砂の中でついに停車するとそこには砂が吹いていた。どういう訳かそこは砂丘だった。それもまるでこの世ではないような限りない砂の海だ。ウインドウ越しに犬の姿を探したが見当たらない。あたりを執拗に確認してからドアを開ける。
 いきなり砂が吹き付けてきて視界が霞む。それでも雅志はふらりと外に出て歩き始めた。
 やがて砂丘の頂上に立って雅志は腰を抜かしそうになった。眼下に城が現れたのだ。それも中世ヨーロッパの古城だ。その巨大な城は黄色い砂の中に斜に傾いて聳えていた。なんとも異様な眩暈のするような光景であった。
 雅志はほとんど無意識に砂を転がるようにして城の傍に降り立った。もうその時には雅志の全身は砂に塗れていた。そしてその重い門を力任せに押し開けて中に入り様子をうかがった。まるで牢獄のような堅牢さを備えた石の壁が圧し掛かるようであった。
 ――いったい、ここはどこなんだ!!―― 
 雅志が叫んだ時、忌わしいものがついに背後に現れた。あの犬である。思わず振り返ると犬はもはや魔物と化していた。漆黒の巨犬はまったく無音無声のまま、双眼に憎しみを貼り付け牙を剥いて雅志を睨みつけた。その威圧感は並みの物ではなかった。
 巨犬はじりっ、じりっと雅志との距離をつめてきた。獲物との間を図っているようであった。しかし雅志にもはや恐怖の表情は読み取れなかった。覚悟を決めたのか、でなければ気が違ったのか……。
 雅志はゆっくりと後退した。そして城の窓のような部分の錆びて折れそうな鉄格子を背にして怒鳴った。
「この犬野郎! この俺が憎いか。だがあれは事故なんだ。わかるか事故なんだよ!!」
 犬が一瞬静止した。その間に雅志は錆びた鉄格子の一本を渾身の力で引き抜いて構えた。
 次の瞬間、巨犬はその下顎の寒気のするほど大きな牙を雅志の喉に埋め込もうと大きく跳躍した。しかしその牙は雅志を捕らえなかった。
 雅志は間一髪、鉄格子を剣のようにして犬の眉間めがけて思い切り振りおろしていたのだ。まるでダンプカーと正面衝突したみたいに犬はその巨体をぐにゃりと曲げてその場に蹲った。
 いつの間にか雅志の瞳に狂気が宿っていた。彼は尚も動けなくなった巨犬の頭を鉄格子で数回強打した。犬の耳の肉片が吹き飛んで鮮血がほとばしった。そして巨犬がもはや自分に刃向かわないと知ると無造作に鉄格子を石の床に放り出した。
「ちっ! この化け物!」
 雅志は舌打ちしてゆっくりと直立したが、暫らく殺伐とした余韻がその場に残っていた……。

                          つづく
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