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Black Dog 5 最終回

Posted by 松長良樹 on 23.2011 0 comments 0 trackback
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 彼が城の窓から外を見た時に異変が起こった。城が揺れていた。まるでエレベーターに乗ったような感覚だ。
 地鳴りを伴って城は超巨大な砂丘に今にも呑み込まれようとしているのだ。それを知った雅志は何度か転びそうになりながらも足早に城から躍り出た。
 外には砂が吹いていた。激しい颶風が砂を舞い上げている。細かい砂の粒子が雅志の顔面を叩いた。それでも何とか雅志は砂丘の頂上付近の岩盤みたいな部分に這って行った。死に物狂いである。            
 そしてようやく岩盤に辿り着き上体を立て直した。目前に驚愕に足る光景が展開していた。ゆっくりとした回転を伴いながら円錐形の城の塔が砂中に沈んで行くのだ。それを雅志は無表情のままで凝視した。
「いったい、ここはどこだ!! どうなってる。俺はこんな場所を知らないぞ!」
 雅志は半狂乱になりながら絶叫した。しばらくすると跡形もなく城は消え失せていた。
 ――あの犬もカマロも今はもう砂の中だ。まるで悪夢か幻覚のようであった。
 そして打って変ったような静寂がその場を支配した。 その時になって雅志はようやく落ち着きを取り戻した。
 と、今まで静止していた砂の海の湖面がにわかに波だった。
 その波濤は見る見る大きくなって渦を巻きだした。そして皿の底みたいに一瞬沈み込んだと思うと、とてつもなく大きな柱のようなものが空中に出現した。まるで高層ビルかタワーのようであった。
 雅志は目を疑い、心臓が氷結するようであった。その柱のようなものには蒼白い鱗が光っていた。それは柱などではなく竜の首であった。長い首に身も凍るような恐ろしい竜の頭がついている。
 ちょうど逆光で雅志は目を細めたが、すでに体は痙攣に近い震えに襲われていた。
 竜は遥か上空にあるその大きな顔を、雅志に近づけ、そして気迫のこもった声でこう言った。
「お前はあの女を、わざと殺したんだね! 御見通しさ」
 雅志はただ絶句する以外なす術(すべ)もない。
「お前は俗にいう悪徳弁護士だよねえ。客を騙して法外な料金をふんだくるのだろ!」
 ねっとりとした鱗が光を浴びて七色に輝いている。
「……」
「あの女はお前の事務所の秘書だった。そしてある時お前の悪事を知って警察に届けると言ったんだ。そうだろ!」
「…な、な」
「お前はそれを土下座して思いとどまらせた。そして心を入れ替えるから結婚してくれと大嘘をついたんだ。哀れなあの女はそれを信じたんだよ」
「なんで竜がしゃ,しゃべれるんだ! 馬鹿もいい加減にしろ」
「でも腹黒いお前はその時から彼女を殺そうと決めていた。そして自転車まで新品を買って与え、あの松林で彼女が自転車で通りかかるのを待ち受けていたんだ。あの赤いカマロでね。そうなんだろ! そして彼女を轢き殺すと、さも事故のように演技したんだ。自分にまで事故だって言いきかせたんだろ!」
「ち、違う。あれは本当に事故なんだ」
「それにしても犬には手こずったようね。でもお前はあの犬まで殺した。あんなに忠実な犬まで」
「全部事故なんだよ!」
 雅志がヒステリーみたいな声をあげた。
「だいたい、竜に何が判る。けだものじゃねえか!」
「なぜわかる? それじゃ教えてあげるよ。あたしはねえ、あの女なんだ。あの哀れな女の怨念があたしに乗り移ったんだよ。だからあたしはこうして地獄からやってきた!」
「うそだ! でたらめ……」
 雅志は最後までその言葉をつなげなかった。それというのも竜の牙は雅志の心臓を一瞬で貫いていたし、瞬く間も与えずにその体をまるで人形のように砂の底に引きずり込んでしまったのだから……。
 竜が深く沈んでしまうと、海面は真の静寂を取り戻した。

 ――そして何事もなかったかのように、カモメが優雅に海上を飛んでいた。

                           了
                       
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