究極の宇宙クイズ

Posted by 松長良樹 on 14.2011 0 comments 0 trackback
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 あるときなんの前触れもなく、宇宙から大きな声がこだましてきた。それは万人に聞こえるような張りのあるはっきりした声で心の底まで響くような声音だった。その声は様々な国の人々にそれぞれの母国語となってダイレクトに伝わったのだ。
「地球人の諸君、我々は宇宙生命体である。諸君のいうところの宇宙人と解釈してもらって一向に構わない。君たちは長い年月をかけてある程度の進化をとげてきた。そして我々のレベルにまでもうすぐ達しようとしている。そこでクイズを出す。これは儀式のようなものでこのクイズによって君たちの適合性が試されるのだ」
 誰もが空を見上げたがその声の主は姿を見せずに声だけが聞こえてくるのだ……。
「このクイズによって君たちは淘汰される。君たち人類が宇宙にとって存在価値のあるものかどうかが試される時が来たのだ。このクイズに正解さえすれば将来を約束されるが、もし間違えたら諸君の未来はないと思え。尚、このクイズは究極の○×式で出題される。出題数は一問のみ、それに正解さえすればよいのだ! もし答えない場合はむろん不正解となるのは常識であろう」
 大変な事になった。世界中が大慌てだ。誰かの陰謀だとか、神の啓示だとかおよそ予想されるありとあらゆることが起こった。そして対策も何もないまま、そのクイズはついに出題された。
 空に大きな気球みたいなものが浮かんでそれが白い幕のようなものを垂らし、そこに問題が書かれてあったのだ。それが不思議な事にその字はすべての人種が理解できる文章なのだった。そして問題はこうだ。
『宇宙に存在する生命体はどうしてもやむを得ないときは、他の生命体を殺しても良い』
 そして声が響いてきた。
「この問題の解答時間は君たちの時間で今から二十四時間とする。それまでに良く考えて回答してもらいたい。尚、回答用紙は所定の場所に置いてあるので○か×を記入すればそれで良い。なにをどう調べても良いから、諸君の英知を集結してこの問いに答えるのだ」
 世界が動揺した。たったこれだけの問題だが何を基準として出されたのかもわからない。誰がどうこたえるのかが各国の首脳間で議論されが、その議論は長引いた。宗教人は×だと言い、政治家は○だと譲らない。
 ありとあらゆる人がありとあらゆる意見を出した。絶対答えるなと言う意見もあった。しかし瞬く間に時間だけが過ぎて行った。そして人類は回答者を一名抽選で選ぼうと言う結論に達した。
 その任に当たったのが若い大学生で、その理由は単に――受験慣れしているから――だった。彼がそれを知ったときは気絶しそうになった。それでも仕方なく彼は所定の場所の大きな答案用紙を手にした。残り時間が迫っていた。彼は最初真っ白な答案用紙に○を書いた。そしてすぐにそれを消しゴムで消して×と書き直した。
 そしてまたそれを消した。消したり書いたりの繰り返しだ。彼の顔面は蒼白になった。今にも倒れそうだ。そして時間が来た。
 答案用紙を見て宇宙人の声が響いてきた。
「これはどういう意味なのですか?」
「……」
 絶句する青年。彼の眼は虚ろに虚空に注がれていた。答案用紙には△が書かれてあったのだ。世界が絶望的な声を出した。みんな世界が終るのかと思った。その一部始終をカメラがリアルに捉えていた。
「もう一度訊きます。これはどういう意味なのですか?」
「わかりません。どっちも正しいようなそうでないような、だからどっちつかずの△です」
 暫らく重苦しい沈黙がその場を支配した。しかし暫らくして宇宙人の思いもかけぬ言葉が返ってきた。
「なるほど、これは気づきませんでした。宇宙広しとはいえ△を書いたのは貴方が初めてだ。良い意味でとても驚きました」
「……」
「今回の問題はなかったことにしましょう。いつの日かまた改めてここに来ましょう。我々は諸君の新しい可能性を知った思いです。ではっ、さようなら」
 それきり二度と声はしなかった。人類は救われたのだ。それにしてもクイズの正解は明かされぬままだがそれも致し方がない。

                              おしまい
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