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聖獣の系譜 6

Posted by 松長良樹 on 31.2012 0 comments 0 trackback
縺・♀・具ス具ス祇convert_20120527105308

 望月はようやく目を開けたがまだ目眩が残っていた。薄暗い部屋の中を見回し、失せた記憶を手繰り寄せようとしてもがく。細かい痙攣に似た震えが全身に頻発している。自分の喘ぎが音のない世界に拡散して凍りつく。
 ――いったいどうしてこんな事になってしまったのか! おぼろげな意識がしっかりしてくると、自分が頑丈な鋼鉄の椅子に拘束され上半身を裸にされている事がわかった。冷たいコンクリートの床、むき出しの鉄の柱、窓さえない密室である。
 闇雲に頭を振るとジグソーパズルみたいに、ばらばらに飛散した記憶の断片がつながりだし、忌わしい記憶が鮮明となった。
 それにしても身動きができない。両手に力を込めれば両手首を金属製のベルトに締め付けられる。望月が懸命に目を凝らして周辺を探索していると、数メーター離れた左正面の鉄製のドアが開いた。逆光に目が眩む。そこに背の高い男と女のシルエットが浮かび上がった。つかつかとこちらに迫ってくる二人。
「やっと目が覚めましたねえ。望月さん、あなたはもう六時間もそうして眠っていた」
 どこかで聞き覚えのある声だった。そうだ、その声の主は茶髪の若い男だ。あのノアビルの前で遭遇した男。紺のスーツ姿だった。改めて男を見つめると極めて整った端正な顔立ちに冷酷そうな切れ長の目をしていた。薄い唇がなんとも非人間的な印象をあたえる。
 女は望月が助けたあの美人だ。黒い髪、黒のロングドレスがバランスの良い肢体に密着している、ブローチもヒールも全て黒一色、そのなかにバラのような美貌が咲き誇っていた。これまでの茶髪は鬘のようである。人を射るような強烈な視線が輝いていた。
「おい! おまえらやっぱり仲間だったのか、よくも俺を騙したな! このままじゃ済まさねえぞ!」
 向こう気の強い望月が噛みつくように吠えた。
「だめよ、だめだめ。そんな怖い顔したってあなたは動けないわ、あなたを拘束している椅子はロンズデーライトでできてるの。世界一固い金属だわ」
「ちきしょう。俺をどうしようってんだ」
「望月さん、あなたの秘密を僕らは知っている。あんたの過去まで、すべてあなた自身より僕らの方が詳しいくらいだ。なにしろ我々は昔から黒川と通じていたのです」
「そうかい、そいつあ話が早くていいや。で、俺を動物園にでも売り飛ばそうって魂胆か?」
「馬鹿を言わないでください。あなたは宝ですよ。貴重品だ」
「……」
「まあ、もう少し頭を冷やしてください。そうだ自己紹介でも致しましょうか。僕は田沼勇二といいます。こう見えても科学者ですよ。この人は田沼美沙子、女医で僕の妹です。あなたを獲得するにはこうするしかなかったんですよ。まともにあなたを拘束でもしようものなら死人がでる」
「死人だ? 俺はもう以前の凶暴な黒豹じゃない、おとなしい黒猫さ。しかしおまえら何者なんだ正体を明かせよ」
「いいでしょう、順を追って話をしますから聞いてください。我々は機密組織ダークムーンの協力者です。あなたの良く知る黒川もその中の一人です。我が国を馬鹿にしてスパイ天国日本などとよく言われますが、実は自衛隊の一部に愛国同盟みたいなものが存在する。最右翼ですよ。彼らは戦時中の特別高等警察や、陸軍中野学校、東機関等を今流に再構築することを真剣に考える一派です。彼らの真情は帝国の再建であり、核の保有です。それが今の安全保全隊、特別暗号名『ダークムーン』の母体です。つまり望月さん、あなたは黒川が生んだ秘密兵器みたいなものなのですよ、ダークムーンにこそその所有権がある」
「まるでおとぎ話だな」
 不機嫌に望月がそう言い捨てた。
「実はねえ、あの少年が未だに何処にいるのかわからないの」
 田沼美沙子が口をはさんだ。
「ほう、そいつは良かった。お前達には見つけてほしくはねえ。ところであいつは死んだのか、怪物斉田だ。あいつが生きていたんじゃ夜もろくに眠れねえよ」
「残念ながら彼は死にました。聖獣の血と少年の血を合わせた彼の血はどういう訳か不死性が失せていたのです。遺体は秘密裏に我々が処理した」
「……そうか、斉田も哀れな奴だ」
「哀れなんてよく言うわ。お前が殺したくせに…。斉田はあたしの恋人だったのよ、才気のある可愛い男だった。なんでもあたしの言う事をきいたわ」
 田沼美沙子がずいぶんと感情的な声をして言った。
「こいつは驚いた、怪物にも恋人がいたのか。しかしどうして俺の居場所が分かったんだ」
「望月さん、あんたが海底から復活したとき、太平洋沖で高速船より早く泳ぐ男をそこを通りかかった石油タンカーの船員が目撃した。そしてその写真が新聞に出たのですよ」
「……なんじゃそりゃ」
「あなたも能天気な人ですね。そんな突飛な記事を我々が見逃すわけがない。我々はその記事を圧力をかけてもみ消しましたよ。目立たせたくはない。そして僕はあなたをそれからずっと監視していました。そしてどうするか重々考えていたのです。それにしてもカマロで夜の東京をかっ飛ばしてたら目立ちすぎじゃありませんか、全くあなたは面白い人だ」
「豹は速く走るのが好きなんだよ」
「そうですか、まあいい」
「それで俺の運命の予定は?」
「ふふっ、余裕があるのね。ダンディを気取ろうたってあなたの運勢は下降気味よ、今に泣き出すから、見てらっしゃい」
 田沼美沙子が薄気味悪く笑った。

                  つづく
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Category : 聖獣の系譜


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