聖獣の系譜 10

Posted by 松長良樹 on 04.2012 0 comments 1 trackback
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 伊藤紀子が午後一時を少し回った頃、千駄ケ谷の自宅の前で待っているとグレーのパジェロが勢いよく停車し、ドアウインドーが下がると須藤研一の元気そうな顔がのぞいた。
「さあ、乗りなよ」
 紀子はためらいもなくマグボトルを持参のうえ、助手席に乗り込んだ。カーナビがもうセットされていたので車はスムースに発進した。
「でもなんか変な感じ、社長探しの旅か……」
 マグボトルを口の運ぶ紀子の瞳に好奇心が揺れている。須藤研一はただ「うん」と言ったきり至って寡黙だった。研一は今回の望月の行方探しになぜか非常に興味を覚えた。それというのも最近彼は探偵小説に凝っていた。もしかしたら自分が探偵になった気でいたのかも知れない。
 都内の道路を走り、中央自動車道に乗る。東京競馬場を右に見て高速の国立府中を出れば目的の場所の近所であった。長くゆるい坂を走り、人家がまばらにしか見えなくなったとき、鬱蒼とした雑木林の中にその古城のような洋館が見えてくると、唖然として二人は顔を見合わせた。最初は凝ったラブホテルかとも思えたが、それにしては古めかしい。
 研一は車のスピードを無意識にセーブした。望月の腕時計はその洋館の中だとGPSが教えている。疑う事のできない事実だ。近くまで行ったが高い鉄の柵が行く手を阻んだ。仕方なく車を止めて二人は降りた。緑青の染まった鉄の門は閉まっていて、門の横にインターフォンがあった。
「ねえ、ここに本当に間違いないの?」
 不安そうに紀子がきいた。
「ああ、間違いないと思うGPSが壊れていない限りね。それに……」
「それにどうしたの?」
「ごらんよ、きのう小雨が降ったのでタイヤの跡がくっきり残っている。この門を車が通ったんだ。それにこのタイヤ跡の幅の広さを見て、国産のタイヤじゃない。まさかトラックでもないと思うよ。望月さんのカマロのタイヤだと思うよ。きっとそうだ」
「へえ、まるで探偵さんみたい」
 研一は門の中に車がないか懸命に探している。
「インターフォンを押してみよう、確かめるんだ」
「でも……」
 紀子が不安そうだ。
「僕らは何も悪い事をしに来たんじゃないから、そんなに遠慮しなくたって大丈夫さ」
 研一は躊躇しないでインターフォンを押した。しばらくたってから館の二階のカーテンが一瞬動いたかと思うとインターフォンに応答があった。
「どちら様でしょう?」
 トーンの高い女の声であった。
「失礼します。僕は須藤と言う学生ですが、ここに望月と言う人が来ていませんでしょうか?」
「――」
 暫らく間があった……。

                       つづく
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 伊藤紀子が午後一時を少し回った頃、千駄ケ谷の自宅の前で待っているとグレーのパジェロが勢いよく停車し、ドアウインドーが下がると須藤研一の元気そうな顔がのぞいた。 「さあ
2012.06.08 03:20 まとめwoネタ速neo
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