スポンサーサイト

Posted by 松長良樹 on --.--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

聖獣の系譜 13

Posted by 松長良樹 on 07.2012 0 comments 0 trackback
縺・♀・具ス具ス祇convert_20120527105308

 派手なピンクのドレスというものはそれを身に着けるものを選ぶ。なまじ容姿に自信にないものがそれを着たら、およそ安っぽい場末のキャバレー嬢に見えてしまうのがオチだ。
 着こなし一つで美と醜の表裏を別ける大胆なドレス、その悩ましいドレスをこの上なく妖艶に魅惑的に着こなす女性がいた。田沼美沙子である。彼女は不夜城大東京に咲いた鮮やかな蘭の花だ。東京シティに夜の帳が降りてしまうと街は暗黒街の横顔を覗かせる。人々の夢と欲望とが交錯して、混じり合いキナ臭い異臭を発散するのだ。

 田沼美沙子はさっきから身の内側から湧き上がる異様な歓喜を押し殺していた。腰までスリットの入った悩ましいピンクのドレスを着、長い脚を高々と組んで彼女はトランプカードを指先に挟むようにして密かな笑みを浮かべていた。ここは乃木坂のシティホテルに隣接して建つ超高級マンションの最上階、ダイヤをちりばめたような夜景の見える場所に闇の裏カジノが存在した。彼女は平和とか平凡とか言う退屈が嫌いで、男勝りに単身こんなやばい場所に出入りしているのだ。
 常に刺激を求める風変わりで奇矯な彼女の性格が垣間見られるようだ。常連客は事業家や医師、政治家、一流企業の幹部連達、もちろんそれを仕切るのは堅気のものではない。昔は花札に興じた彼らも今はポーカーの方を好んでゲームする。おかげで裏のカード製作専門に莫大な利益を上げている企業もあるらしい。
「もうだめかと思っていたけど、どういう風の吹き回しかしら…」
 他の客はやたら溜息ばかり吐く新顔の美沙子の演技を真に受けてかなりの額をベッドしてしまっていた。ノーリミットルールだから都心の新築マンション一部屋を買えるほどの額がはられていたのだ。彼女の手はストレートフラッシュ、七万分の一の確率。周りの客たちの表情が一瞬に変わった。赤い上気した顔をしてカードをじっと見つめる男、或いは蒼白な顔をして額に手を当てたまま考え込んでしまったような紳士。人さまざまであった。
「あら、ごめんなさい。気持ちよく勝てたところであたしは帰る。つきが落ちないうちにさよならってわけ、悪く思わないでくださいな」
 田沼美沙子のよく通る声。
「ちょっと待ちなよねえさん。もう一勝負しようじゃねえか!」
 斜向かいに座っていた黒沼が太い声を出した。インテリやくざの幹部でこの所場の開催人である。他の客はみな無言であった。
「ねえさん今夜はついてるぞ。勝負は勝てるときにとことん勝つものだぜ! もう一丁勝ったらあんた凄い大金を持って帰れる」
「あら、勝負は見切りが肝心なのよ、勝ったらやめるのがあたしの主義なの」
 黒沼が苦々しい顔をした。
「まあそう言わずによお、まだ宵の口じゃねえか」
「あら、あたしを帰さない気じゃないでしょうね。ここには堅気の常連客が沢山来ているじゃないの。怖がって来なくなるわよ」
 美沙子の声がしんと静まりかえった所場に甲高く響いた。
「わかった。ねえさん」
 黒沼が仕方なしに頷いた。

                 つづく
スポンサーサイト
Category : 聖獣の系譜


  • password
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://kitunosuke8.blog33.fc2.com/tb.php/279-167f25af
▲ top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。