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聖獣の系譜 18

Posted by 松長良樹 on 12.2012 0 comments 1 trackback
縺・♀・具ス具ス祇convert_20120527105308

 ――そこはネオンに霞む銀座のクラブだった。最近の銀座は一昔前みたいに派手に遊ぶ客が減った。それにしても今日は『クリスタル』という名のクラブには客が少なかった。しかしこの店のナンバーワンの絵里加だけは常連客がいて、難しい株の話をするので話も程々になんとなく高層ビルの窓から夜景を眺めていた。
 ちょうどその時、入口のボーイが客を出迎える声がして、その男は何処からともなくコツコツという靴音を響かせてやって来た。上背があり、がっしりとした頑丈そうな体格をしている。浅黒い不敵な面構えにウエーブのかかったロングヘヤーが妙にマッチしていた。濃紺のスーツを着込み、どことなくエキセントリックなにおいを漂わせていた。
 男は店の一番奥の大きなディフェンバキアの鉢の横のボックス席に腰をおろした。それにしてもおかしな事に夜だと言うのに男はサングラスをしている。早速店の若い娘(こ)ゆかりが跪いて接待したが、男はゆかりに何やら耳打ちしたらしく、ゆかりは黙って絵里加の前に来て「あなたをご指名よ」と言って困った顔をした。大胆不敵な客であった、一見なのにいきなりナンバーワンの絵里加を指名したのだ。しかし絵里加には常連客の紳士がいるからすぐに相手はできなかった。
「丁重にお断りしてください」と絵里加が告げるとゆかりは又席に戻った。すると男がいきなり大きな声を出した。皆が驚いて男の方に視線が集中した。その視線を浴びたまま男はボックス席を立って絵里加の席までやってきた。そしてこう言った。
「俺はあの席から君をずっと見ていた。あんたのその姿、形が凄く気に入ったから、今夜は俺の相手をしてくれ!」
 それをきいた中年紳士が真っ赤な顔をしていきなり立ち上がった。
「君! どういうつもりだ。いくらなんでも失礼じゃないか。絵里加は今僕の相手をしているところなんだぞ、見慣れない奴のくせに、少しはものを考えろ!」
「金ならお前の倍出そうじゃないか」
「こ、こいつこの僕を誰だと思ってやがる!!」
 男がその時初めてサングラスを外した。ああ、それは人間の目ではない。鼻柱に異常に近くに狭まった双眼は動物のそれのようにギラギラと光っていた。
「帰んなよ、ぼけっ!」
 一瞬唖然とした紳士であったが、その悪態にさすがに堪忍袋の緒がきれ、興奮して男につかみかかった。その瞬間、その中年の紳士の頬に赤い筋が三本走った。そして見る見るそこから血が噴き出てきた。まるで刃物をつかったようであった。紳士がもんどりうって床に転げまわった。
「きゃーっ!!」
 絵里加が甲高い声で気が触れたように叫ぶと、ボーイと他の男達も集まってきた。そして誰かが警察に通報した。
「お客さん!! どうしました!!」
 警官三人が店にやってくるのは意外な程に速かった。中年紳士が顔面を血に染めて苦しんでいて、それをボーイたちが介抱していた。それを冷酷に見下ろすように男はその場に仁王立ちしていた。ボーイが怯えた顔のまま男を指さした。
「おい! きさま現行犯で逮捕する。署まで来い!」
 警官がそう叫んだ瞬間にその警官の腹から血が噴き出した。まるで鋭い刃物で抉られたようであった。おもわず警官が信じられないという表情のまま床に倒れ込んだ。ああ、そうだ、こういう光景が前にもあった。田沼美沙子がやくざに追われたときの惨事が今またここに起こったのだ。音のない笛でやってきた黒い影の正体はこの男だったのだ。目にもとまらぬ速さで動けるこの怪物だったのだ。もう一人の警官がすかさず拳銃を抜こうとしたが、その手が千切れて宙に踊った。なんと痛ましい!
 ――男の双眸が燐のように怪しく底光りして不気味に燃え立っていた。

                     つづく
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Category : 聖獣の系譜


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2012.06.12 21:46 まとめwoネタ速neo
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