聖獣の系譜 23

Posted by 松長良樹 on 17.2012 0 comments 0 trackback
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 まだ体が震えている紀子を促すようにして研一は廊下にでて階段を恐る恐る上り始めた。不安いっぱいである。いつ何処から田沼の配下たちが飛び出してくるかもわからない。運を天に任せるようにして狭い通路の階段を一歩一歩踏みしめていく。階段を三段上がったところでドアがあり、それを開けると広い踊り場にでた。
 やはり薄暗いが視界は広がり、尚も進むと上から光が射していた。今度はスロープがあってそこを上ると外灯に照らされた明るい窓が見えた。地上へ出たのだ。手前に見えてきたドアを開ければ外に出られる。そう思って紀子が心に喜びを噛みしめようとしたとき、後方から声がかかった。
「ほう、よくあそこからここまで出てきたじゃねえか!」
 ああ、あのチンピラ連中が後ろに忍び寄っていたのだ。天運は彼らを見放してしまったのだろうか? 二人は振り返ったが手に武器一つ持っているわけではなかった。チンピラらは四人、ひょうきんな三白眼、坂田をはじめ、大男の村上、小太りの小早川、痩せぎすの土田たちだ。
「ここから逃げ出すなんぞ、不可能だぞ。廊下と階段にはすべて監視カメラが取り付けてある。俺らは田沼さんたちと管制室に居て、おまえらの脱走を見ていたんだ。しかしあの飯田の間抜けにも恐れ入ったよ、飯田はもうおしまいだ。田沼さんが本気で怒っちまったからなあ」
 大男の村上が機嫌の悪そうな声を出した。
「……」
「それでなあ、君たちに悪い知らせだ。田沼さんが一思いにお前ら二人を始末してしまえとおっしゃる。生きていられたら面倒らしいんだな。お前らを死体にしてから体をばらばらにしてコンクリート詰めということらしい」
 まったく凶悪な言い草であった。
「そ、そんなことをしたらすぐに足がつくぞ、僕は車でこの洋館のそばまで来たんだ。ここの近くに駐車してあるから僕らが行方不明になったら警察がここに来る」
 研一が上擦った声でそう言った。
「なあに、そこは頭のいい田沼さんがちゃんと考えているだろうぜ。俺らの知ったことか!」
 紀子がもう顔面蒼白で失神しかかっていた。研一とて同じ心境だった。
「さあ、おとなしく死んでもらおうか」
 三白眼のふところからおもむろにナイフが引き抜かれると、紀子がついにくずおれた。しかし、その時その中の土田が思いも及ばない台詞をはいた。
「なあ、こんな若い二人を殺すなんてあんまり可哀想じゃねえか、二人ともこれからの日本をしょって立つ前途のある若者ですぜ。このまま逃がしてやりましょうよ」
「……な、なんだと?」
 坂田は一瞬驚いたが、他の二人も当然おどろいて土田に視線を集めた。
「おい、土田どうしたんだ。正気かおまえ、これは田沼さんの命令なんだぞ」
「ええ、もちろん承知してまさあ」
「だったら黙って従え!」
「いやねえ、実はその田沼さんとかいう人が俺は大嫌いなんです」
「お、おいっ土田、口を慎め!」
「嫌だね、嫌なこった!!」
「こ、この野郎、とうとう気でも違いやがったか!」

                  つづく
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