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聖獣の系譜 27

Posted by 松長良樹 on 21.2012 0 comments 1 trackback
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 顔の中央に寄ったその眼は底しれない妖気に満ちていた。そして暗い炎に燃えていた。口は正面から見ると小さい三つ口であったが実際は耳まで裂けていた。そしてぬめぬめとした口内にのぞく真っ赤な舌には、無数の細かい針のような突起が内側に向かって生えていた。そしてその舌の突起物は呼吸の度に風にそよぐ草原みたいに不気味にうねるのだ。どうみても人間の顔ではない。それは猫の顔だ。そうだその顔はネコ属の特徴を見事に備えているのだ。色は濃い紫で頬は異様に痩せていた。
 そういう顔が絵里加の顔の前にあった。しかし絵里加は無表情だった。というのも彼女には意識がなかった。体中に擦り傷や切り傷が無数にあって、着ていた濃紺のシックなドレスはあちこちが破れてもうびりびりであった。ドレスから飛び出した白く艶めかしい脚は血に塗れていた。その脚を赤い舌が這っていた。
 怪猫はその舌先で彼女の脚についた血をぺろぺろと舐めているのだ。なんとも身の毛もよだつ悍ましい光景であった。やがて絵里加の意識がおぼろげに回復すると、怪猫は嬉しそうに眼を細めた。絵里加はそれを知ると思いっきり身をのけ反らして抵抗したが手と足の自由が利かなかった。両手両足を縛り上げられ床に敷いた毛布のようなものに寝かされていたのだ。
 ここは青梅市御岳渓谷である。そのなかの鬱蒼とした木立に囲まれた一隅に小さな滝があり、その裏側に昼なお暗い洞窟がある。その湿った場所こそが怪人の隠れ家なのであった。しかし哀れな絵里加はこんな場所にとらえられ、いったい怪人は何をしようと言うのか。どうせ良い事ではあるまい。しかしこんな場所に訪問者があった。
 滝の水が一瞬二つに分かれるとその中にシルエットが映った。美しい体のラインが浮かび上がる。それはなんと田沼美沙子であった。美沙子はまた随分不機嫌な様子で怪人を睨みつけた。
「あんた! 自分のしたことがわかってるの!?」
 背後からのきつい言葉に怪人は思わずその赤い舌を引っ込めて美沙子を振り返った。
「なんて勝手な真似をしてくれたの、警察があんたを探している。非常線を張ってあんたを待ち構えているんだ。世間ではあんたの事が大変なニュースになってるんだよ! 各新聞の一面はほとんどあんただよ。世間はあんたとこのホステスの話題で持ちきりさ。もし、あたしがあのビルに行かなかったらどうなっていたと思うの!」
「仕方ねえじゃねえか、あんただってやくざに追われて、俺に助けられたことがあるんだからこれでお相子だ」
 怪人もまた不機嫌な顔をして応じた。

                   つづく
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Category : 聖獣の系譜


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 顔の中央に寄ったその眼は底しれない妖気に満ちていた。そして暗い炎に燃えていた。口は正面から見ると小さい三つ口であったが実際は耳まで裂けていた。そしてぬめぬめとした口内...
2012.06.22 22:45 まとめwoネタ速neo
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