聖獣の系譜 29

Posted by 松長良樹 on 23.2012 0 comments 1 trackback
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「でも勝手にこの女をさらって、あんたはいったいどうしようというの?」
 美沙子が詰問した。
「この女は俺の妻にするんだ。それで俺の子を産ませようと思うのだ。俺はかわいい子がほしい、家族はむかし皆死んだからなあ」
 その言葉をきいて美沙子は一瞬放心状態になった。あいた口がふさがらないと言う状態だ。
「俺はここで毎日彼女を抱く、もちろん人間の姿でな、そしてはらませるんだ」
 そういうと木村は薄気味の悪い笑い顔をして絵里加と美沙子の顔を交互に凝視した。もう絵里加は全身を震わせていた。
「気でも狂ったの! そんなこと兄さんだって兵頭さんだって許さないよ!」
「許すも許さないもねえ、俺の自由だ!」
「まあいいわ、きょうあたしがここに来たのは、あんたの力が借りたいからだよ」
「……」
「実はダークムーンの基地のひとつ、東京の拠点の存在が明るみに出そうなんだ」
「あの洋館か?」
「そうだよ」
「それはヤバイんじゃねえか。なぜ、そんな事になった? えっ」
「あそこの地下に望月をうまく拘束していたんだけど、逃げられたんだよ、しかも学生までにも嗅ぎつけられた。だから彼らを消して欲しいの。これは兵頭閣下からの依頼でもあるのよ。彼らの資料も置いてゆくわ。あの基地は跡形もなく焼いてしまうけど、人の口に戸は立てられないもの。組織の機密は絶対に守らなければならないわ。やがて来る帝国の時代の為にもね。三人を片付けたらこの女を自由にするがいいさ、あたしからも兵頭さんに了承してもらう。でないとあんた兵頭さんを敵に回すことになるよ。あの人の恐ろしさはあんただって知っているだろ!」
「ああ、知ってるさ、兵頭は人間じゃねえもんな。化け物だ。しかし望月ときいて俺の血が騒ぐせ。あんたの恋人の斉田を殺した化け豹だろ!」
「そうだよ、あんたと同じミュータントだ」
「あいつを殺(や)れるのはこの俺以外にはいねえ」
 木村はそういうとしばらく目を閉じて思案しているようであったが、洞窟の奥にある調度品の中からアームチェアを引っ張り出してきて、そこに座って煙草をいっぷく噴かした。上等な洋もくである。そしてゆっくり言った。
「わかった。やろう」
「そうかい、それならこの女はあたしが一時預かっておくよ」
「まあ、いいだろうその方が楽しみが増す」
「いい、秘密裏にあいつらを始末するのよ、派手な事はくれぐれもやめてよ」
 二人の会話を生きた心地のしない絵里加は黙って聞いていた。悲しげに瞼をじっと閉じていた。美沙子は女を立たせて連れ添うようにして洞窟をあとにした。洞窟の外、滝の向こうには黒い鉄の物体が空中にあった。音の無いヘリだ。その怪物は全く音を立てずに二人を呑み込むと見る間に上空に消えて行った。
 ――薄暗い洞窟の中で獣の目がいつまでも爛々と光っていた。

                      つづく
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 「でも勝手にこの女をさらって、あんたはいったいどうしようというの?」  美沙子が詰問した。 「この女は俺の妻にするんだ。それで俺の子を産ませようと思うのだ。俺はかわいい
2012.06.24 16:21 まとめwoネタ速neo
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