聖獣の系譜 30

Posted by 松長良樹 on 24.2012 0 comments 1 trackback
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 その頃望月は久しぶりに麻布の事務所にいた。長椅子に座り、ぼんやり天井を眺めていた。清掃の仕事も一段落がついて顧客もなんとか失わずに済んだ。研一と紀子は無事に帰宅でき、捜索願は出されずに済んだが、あの洋館に警察が乗り込んだ時には、火を放たれていて、大小の爆発が相次いだ。とても中の様子を調べるには至らなかった。あの洋館は完全に焼失してしまったのだ。だからダークムーンの機密は把持されたと言ってよかった。だがそれは彼らの存在を社会に知らしめたと言う意味では大きな収穫であった。警察や検事たちは本腰を入れて捜索に当たらざるをえなくなったのだ。しかし田沼兄弟はどこに消えたのか? 自分の甘さを反省もしたが、あの二人の事を考えると望月の心に憤りがはしった。
 そこにノックの音がした。おもいもかけぬ客であろうか? それとも……。望月がたってドアを開けると一人の女がそこに立っていた。かなりの美人である。
「どちら様で……」
 そう言って望月がしばらく見つめると女が細い声を出した。
「あのう、おもての看板をお見かけしまして。なんでも親身になってご相談に応じますと、どんな事でも親身になってと」
「ええ、そうです。なんでも出来る限りのことをいたします。まあどうぞお入りください」
 女は促されて事務所のソファに腰をおろした。
「どんなことでしょう?」
「ええ、実は姉が誘拐されまして」
 望月の表情がいくぶん険しくなった。
「お姉さまが…」
「もう新聞で大きく報道されましたわ」
「えっ、それじゃあ、まさか銀座のあの事件の」
 女が頷いた。
「ですが、もう警察が大がかりに捜索しているではありませんか」
「でも、見つかりません。まったく手がかりさえないのです、あたしもう心配で心配で」
「……」
「私立探偵にも頼んであるのですが、いっこうに姉の居所がわかりません」
「それで私に……」
「ええ、実はあたし堪りかねて占い師のところにもいきました、そしたらあたしの家から西の方角になんでも引き受けるような怪しい事務所があるから、そこに行ってみろとそう言うのです」
「怪しい事務所ですか」
 望月が頭をかいた。
「あらっ、ごめんなさい。そういうつもりじゃありませんでした」
「いや、いいんです。で、あなたは妹さんなのですか?」
「ええ、新藤美奈子といいます。姉は絵里加と言う名でクラブで働いていましたが本名を新藤絵里子といいます。私達は二卵性双生児なので顔は似ていませんが双子なんです」
「そうですか、これは大仕事かもしれませんねえ」
 女は心配そうな面持ちで望月をじっと見つめていた。その眼の奥にある悲壮な願いを読み取るのは容易な事であった。真剣な瞳が悲しみに揺らいで見えた……。

                    つづく
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2012.06.24 16:21 まとめwoネタ速neo
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