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聖獣の系譜 31

Posted by 松長良樹 on 25.2012 0 comments 1 trackback
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 ――回想
 いつものように父が飲んだくれて帰ってきたとき、坂野美沙子は言いようのない不安に苛まれた。とても恐ろしい予感のようなものが、全身を覆い凍りつかせていたのだ。というのも夜の夜中に帰って来て、早々に勇二をかなり離れたコンビニまで煙草一つ買わせるためにつかいにやったのが、そもそも父の奸計なのであってその隙に酒の力に任せて中二の美沙子を殴りつけた上に、力ずくで犯してしまったのだ。
 坂野剛三は実の父ではない。母、時枝の再婚の相手なのだが、もうこの時は時枝は病死していてこの世にはいなかった。なんという不幸な出来事なのであろうか。勇二がコンビニから帰ったときには美沙子は、スカートの裾をおさえておいおい泣くばかりで決して兄の顔を見ようとはしなかった。あの時の憤怒と救いようもない絶望が今でも美沙子の心の中に冷凍されている。剛三の鬼畜のような悪行はこの日ばかりには止まらなかった。
 ある時、障子越しに自分の妹が父に犯されているのを覗き見したとき、中三の勇二の心に抜き差しならぬ殺意が芽生えた。勇二の感情は研ぎ澄ました理性と並行して鋭い刃物のように冷やかに光っていた。
 ――夜であった。雨が降っていた。折から近づく低気圧に颶風が吹きすさんで舗装のない小径はぬかるんでいた。そんな中に美沙子はサンダルをつっかけて駆け出した。彼女は剛三の手を逃れたくてめくら滅法に外に飛び出したのだ。剛三が美沙子を追い、その後をやせっぽちの兄の勇二が追いかけた。勇二の手に握りしめた包丁に、悲哀と復讐とが凝結していた。ぬかるみに足をとられて美沙子がそこに転ぶと、剛三は立ち止って真っ赤な顔をして美沙子を暫らく見下ろしてから美沙子の白い手をぐいっと引っ張った。


                          つづく
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Category : 聖獣の系譜


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 ――回想  いつものように父が飲んだくれて帰ってきたとき、坂野美沙子は言いようのない不安に苛まれた。とても恐ろしい予感のようなものが、全身を覆い凍りつかせていたのだ。
2012.06.26 08:37 まとめwoネタ速neo
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