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聖獣の系譜 34

Posted by 松長良樹 on 28.2012 0 comments 0 trackback
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 そこはまだ春になり切らぬ肌寒さの残る夜の銀座であった。望月の目の前に高層ビルが聳えていた。話題のクラブ『クリスタル』のあるビルだ。望月は絵里加探しを妹に依頼されたとき、なんだかくすぐったい気がした。だが決して悪い気がしなかった。まるで刑事か探偵になったような気分を味わったからだ。それにうら若き女性に涙目で頼まれたら、つい一肌脱がずにいられない彼の性格も手伝っていた。そしてこの事件の解決が高額な報酬をもたらすのと、裏に何かありそうな期待も手伝って、彼はなんとか絵里加を探し出そうと本気で考えていたのだ。
 しかし昼間ここに来た時にはまだ検察の調べが続いていて中には入れなかった。当然とはいえ、望月はどうしても現場を見たかったのだ。今も立ち入り禁止のままではあったが、望月は現場をこの目で見る事に決めていた。夜の闇にまぎれて現場を捜索するのだ。望はかなり長い時間ビルを見上げていたが、周りに誰も人がいないことを確認すると、見事に黒猫に変身した。かなり大きなしっとりとした毛並みの黒猫だ。
 そして思わぬ速さでそのビルの壁斜面を駆け上がった。まるで肉球が壁面に吸い付いている様であった。そして『クリスタル』の割れた窓から薄暗いフロアの中に侵入した。室内を物色しているうちに警官の血痕が床に付着しているのを眺め、絵里加の匂いを多数の人の中から嗅ぎ別けた。
 まず、望月には怪人の体臭がすぐ鼻についた。そして怪人と近距離にいた絵里加の匂いを嗅ぎ分けたのだ。その匂いは窓から壁を伝い屋上まで続いていた。しかしその後が解らなかった。その匂いは屋上のある地点で忽然と消えていたのだ。黒猫から人間の姿に戻った望月は夜空を仰ぎ見てため息をついた。匂いがだめなら他の方法で彼女を探さなければなるまい。望月はただじっと夜空を眺めていた。
 その翌日であった。名探偵にはあのデュパンやホームズのように頭脳の探偵もあるが、足の探偵というのもある。ただじっと瞑想するタイプの望月ではないのでじっとしていられなかった。だからその超人の臭覚と直感を駆使して街中を歩き回った。しかし中々めぼしいものは見つからなかった。彼は半日を費やして歩いたが、陽が西に傾きかけていたのでさすがに諦めて、帰ろうと思ったが、あの美しい新藤美奈子の面影が胸によみがえった。
 たしか彼女は保険の仕事をしていると言った。姉の絵里加の写真も見せてもらっていたが、美奈子も姉より控えめで質素な美人であった。そのとき何を思ったのか望月は中野に向かって歩き出した。

                        つづく
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Category : 聖獣の系譜


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