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聖獣の系譜 36

Posted by 松長良樹 on 30.2012 0 comments 1 trackback
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 あちこちが欠け落ちた、湿ったビルの階段を下ると坂田は目の前に現れたドアを一回だけノックした。ドアが開き彼は背後を確かめてから部屋に入った。そこで望月は美沙子の香水の匂いと別に、もう一種類の匂いを確実に嗅ぎ分けた。この階段を最近降りたのは美沙子だけではない。絵里加の匂いもまたこの一隅に残っている。あのクラブ・クリスタルで憶え込んだ嗅いだ。彼の脅威の嗅覚はそれを知らしめていた。ここに絵里加がいる。望月は興奮を覚えずにいられなかった。彼の鋼のような肉体が踊るようであった。
 望月は黒猫から人間の姿に戻った。そしてドアに耳を当てた。物音も足音もしない。そこで彼は静かに、だが無類の怪力でドアノブを引きちぎった。中に侵入すると薄暗い室内の奥に更に地下に階段が続いていた。あたりを注意深く見回しゆっくりと前進する。そして躊躇もせずにその階段を下りた。
 不思議な事に下の階段は新しく堅牢なものになった。下のフロアは何やら倉庫みたいに大きな木箱やら、鉄管やらが無造作に置かれてあった。埃くさい妙な臭いが充満している。そこにしゃがんで体を隠すようにして奥の様子を窺がう。その先に赤銅色のドアがありそのドアの両サイドに門番みたいな男が二人貼り付いていた。
 黒い服を着て後ろに手を組み真正面を見ている二人、望月は何を思ったのか、そのまま涼しい顔をして二人の前に立った。あまりの事に思わず唖然として望月を凝視する二人。一瞬言葉を失ったようであった。
「お疲れ様、さて交代の時間だぞ、ここは俺一人で充分足りる」
 望月がふざけた冗談みたいなセリフを吐いた。二人が顔を見合わせ、狂犬みたいに殺気だって襲いかかってきた。しかし、望月の手刀が一人の首筋に炸裂し、もう一人の鳩尾には正拳突きが食い込んだ。二人が床に這うにはものの十秒とかからなかった。
 鉄製のドアは頑丈であったが望月は簡単に鉄のノブをひん曲げた。ドアを開けると殺風景な空間に女が後ろ手に縛られて床に転がっていた。布で目隠しをされ、さるぐつわまで噛まされている。素早く近づき声をかける。
「大丈夫ですか? 絵里加さん、大丈夫ですか!」
 女は疲れ果て、ぐったりとしていたが助けだと直感したらしく、弱々しくただ頷くばかりであった。人心共にダメージが色濃く残っているのであろう。望月は彼女を担ぎ上げると、もと来た階段を早足で駆け上がった。と、そこに一人の男が立ちふさがった。それを見透かすように目前に誰かが躍り出たのだ。望月が反射的に距離をおいて立ち止まった。
 その男は裾の長い薄紫のロングコートに身を包んでいた。それはどこか尋常でない雰囲気を身に纏う田沼勇二である。いつになく異様な程に目がすわっている。そして彼はまるで佐々木小次郎みたいに日本刀を背負っているのだ。まるで剣士のようであった。

                       つづく
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Category : 聖獣の系譜


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 あちこちが欠け落ちた、湿ったビルの階段を下ると坂田は目の前に現れたドアを一回だけノックした。ドアが開き彼は背後を確かめてから部屋に入った。そこで望月は美沙子の香水の匂...
2012.07.01 10:23 まとめwoネタ速neo
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