聖獣の系譜 43

Posted by 松長良樹 on 07.2012 0 comments 1 trackback
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「学生はなぜ彼らに殺されなければならなかったのですか?」
「あの二人は府中の地下室で犯罪組織のメンバーの顔を見ているんだ。だから」
「なるほど、で、あなたはその怪人を見たことがありますか?」
「いいえ」
「……あなたはこの事件の背後には、犯罪組織があると証言している」
「ええ、そうです」
「そこのところをぜひ、おうかがいしたいところです。それに不思議な事がもう一つある。あなたは絵里加さんを救急病院に運んだ時、肩口を負傷していた。肩から血が流れていたんだ。あなたを見た外科の医師が証言しています。なぜその時傷の手当をしなかったのですか? それに、それに今こうお見受けしたところではあなたの肩の辺になんて傷なんてあるようにみえない。そぶりさえないじゃありませんか、もう完治しているのですか? もし完治しているならあなたは常人ではない。超人ですよ」
 刑事小布施の口調はあくまでソフトであったが、その裏側の鋭い洞察力と探究心を望月は直感していた。どうやらこの男は警視庁でも名うての刑事かもしれない、なぜか望月はそう思った。
 しかし望月はダークムーンの名を明るみに出さなかった。これ以上関わりたくないと言う気持ちがそうさせたのだ。望月は窓から東京の夜景を眺めながらかたく唇をかんだ。
 ――さえざえとしたまばゆい程の満月が中天から下界を見下ろす。
 暗く深い海底のように、そこは蒼白い月光で満たされ、妖しい空間が夜の底に沈んでいる。そこは静寂を極めた荒涼とした無人島であった。宮本武蔵と佐々木小次郎がここ巌流島で決斗をしたのは今から四百年前だと言うが正確には諸説あってはっきりとはわかっていない。

 望月丈は海岸沿いを何度も行ったり来たり歩いていたが、約束の時間が迫るとは足を止め、夜景に映える関門海峡の雄姿をただじっと見つめた。その表情には微塵の隙もなく、神経は張りつめられ、戦慄を覚えるぐらいの凄さを秘めていた。そしてその背中にはなにか哀愁のようなものが貼り付いていた。戦う戦士の哀愁、悲哀とでも形容すべきものだ。
 彼はこの島に泳いで渡った。望月にすれば朝飯前の芸当である。そしてこの小さな島の地形などの頭に入れた。下調べも怠っていないのだ。この戦いが望月にとって生死を別ける恐ろしい決闘であることがうかがわれる。
 約束の時刻なると望月はまるで墓碑のように見える佐々木巌流之碑の前に立った。そして暫らく目を閉じて瞑想でもするようであった。すると途端に鋭い声が闇を切り裂いた。
「よく来た! 望月!」 

                             つづく
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「学生はなぜ彼らに殺されなければならなかったのですか?」 「あの二人は府中の地下室で犯罪組織のメンバーの顔を見ているんだ。だから」 「なるほど、で、あなたはその怪人を見た
2012.07.08 15:14 まとめwoネタ速neo
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