聖獣の系譜 45 最終回

Posted by 松長良樹 on 09.2012 0 comments 1 trackback
縺・♀・具ス具ス祇convert_20120527105308

 木村の目はもはや尋常ではなかった。血走り、猛り狂う怪物の目こそが今の木村の目だった。望月はその嘲笑をききながらずるずると後退していった。そこは海岸の公園のような場所であった。その横にこんもりとした茂みがあった。灌木の暗い茂みだ。そこに望月は這いながら逃げるようにしてその中に隠れた。
 相手もまた黒豹であったが、その体はより痩身でチーターを連想させた。黒豹には赤黒い斑点があった。そして黒い顔から赤い舌がのぞいていた。おぞましい美、怪奇なる美であった。
「そんなところに隠れたって駄目だぜ! 往生際が悪いぞ! 望月」
 赤黒い豹はそう言い放ってじりじり茂みに近づいた。周到に最後のとどめを刺すかまえだ。と、その瞬間思わぬことが起こった。望月が最後の力を振り絞って跳躍したのだ。力のまるでない気の抜けたような跳躍であった。一瞬目を見張った木村であったが、その期を待ち受けたように間髪入れずに襲いかかった。ぎらりと光るサーベルの牙が黒豹の喉笛を貫いた。望月の首が異様な方向にねじれて地面に転がった……。
 が、それと同時のタイミングで木村の喉に黒豹の牙が深く喰いこんだ。完全に不意を突かれた木村は苦し紛れにもがいたが、その牙は赤黒い豹の急所を完全にとらえて放さなかった。完全に相手を仕留めたと早合点した木村に隙が生じた。そしてその一瞬の隙を望月は決して逃さなかった。
 しかし、望月は悲惨を極めて地面に這ってしまったのではないのか? まさか望月は二人いたのか? いや、違う。木村が襲いかかったのは黒豹のぬいぐるみなのだ。それも精巧につくられた剥製のようなぬいぐるみだ。実は望月は昨日にもこの島に来ていた。そしてあらかじめ等身大の黒豹のぬいぐるみを茂みに隠しておいたのだ。そして巧みに相手をその場所に誘導したのだ。後はもう語るには及ばないと思う。望月は本能的にスピードでは相手が一枚上である事を予感していた。そして策を講じて相手を屠ったのだ。
 木村はやがて仰向けに寝たままついに息絶えた。恐ろしい怪物の哀れな最後であった。

 望月は勝った。策を弄したとはいえ、望月は勝った。しかし彼の胸には喜びより、憂いに似たやりきれなさが渦巻いていた。
 彼の頬が満月に照り映えて青白く輝いていた。怪物の背後に強大な敵がいる。それを思うと彼の闘志がまた燃え上がった。凛々しい彼の眼光が鋭くきらめいて夜空を仰ぎ見ていた……。


                      聖獣の系譜     了
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2012.07.10 07:06 まとめwoネタ速neo
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