奇妙な密室殺人

Posted by 松長良樹 on 25.2012 0 comments 0 trackback
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 明智小次郎は死体をじっと眺めながらため息をついてちらりと壁を見てから、何回か頷き今まで険しかった表情をいくぶん柔和なものにした。読者は明智小次郎の名をきいてすぐにあの探偵小説の巨人・江戸川乱歩氏の生んだ世紀の名探偵を連想されることだろう。
 しかしこのお話に登場する明智小次郎と言うのは本名ではなく、かの素人探偵、明智小五郎にあこがれて自分でつけた偽名である。しかし彼もまた素人探偵であり、明晰な頭脳を持っていた。そして彼は刑事を職業とする私の信頼できる友人の一人である。

 ――今回の難事件のあらましはこうだ。
 ある時、権田次郎という土地の有力者が殺害された。場所は権田氏の屋敷の一郭に建てられた八畳あまりの離れである。そこは古風な茶室であり、その中で権田氏は無残に血に塗れて死んでいたのだ。死因は全身打撲で、遺書も動機も何もなく自殺の可能性はほとんどなかった。しかも打撲は後ろから殴られたような痕もあり、凶器も出てこず、ドアの鍵は内側からかけられてあり、窓も同様、内側から鍵付きクレセントがしっかりロックされてあるのだ。
 私はどうやって犯人が権田氏を殺害し、この小さな茶室から逃亡できたのか、皆目わからず、彼、明智小次郎に相談を持ちかけた次第なのである。最初は渋っていた彼だったが、事件の概要をきくと『おもしろそうですね』と言って、私の話をきいて現場まで来てくれたのである。そして彼はたちどころにこの難事件を解決してしまうのである。彼は淡々とこう語った。
「これは複数の人間が力を合わせて行った殺人事件ですね。よくごらんなさいこの茶室の周りにおびただしい足跡があるじゃありませんか、それに犯人たちはどうやら屈強な体力の保持者だ。そしてこの茶室の床下には太くて丸い柱が何本か横に渡してある。これが動かぬ証拠ですよ」
 私には彼の言う事の意味がさっぱり解らず、暫らく押し黙っていたがそれを察した彼が事の真相を丁寧に最初から語ってくれた。
「いいですか、犯人たちはまず複数でこの茶室を取り囲んだ。たぶん地上げ屋みたいな、あこぎな事をしていた権田氏を恨んでいた連中でしょう。まず彼らは茶室に権田氏が入るのを見届けてから、故意に大声を出して権田氏を脅したのでしょう、だから権田氏は怖くなって内側から鍵をかけた。そこで彼らはこの茶室をゆすったのです。あらん限りの力でです。そのために兼ねてから床下に丸太を渡しておいたのです。最初は震度三、そして震度四、五、六、七……。権田氏の身体はもうその時、宙に踊っていました。そして壁に柱に、果ては天井まで何度も体を激しく打ち付けられたのです。刑事の皆さんは天井の血痕にお気づきでしたでしょうか? わずか数分の間に権田氏は致命傷を負ったのです。それを見届けた犯人たちは丸太を持ち去るつもりでしたが、家のものに感ずかれそうになったので慌てて逃げたのです。奥さんや家政婦が、深夜に大きな音がしたと証言しているではありませんか。指紋が見つからないのは彼らが軍手をしていたからでしょう。犯人は最近追い立てをくった者の中に必ずいます。さあ、あとは刑事さんにお任せいたしますよ」
 彼、明智小次郎はそう言って、もじゃもじゃ頭をかきながらほがらかに笑った。


                      おしまい
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