アイスウーマンの腕時計

Posted by 松長良樹 on 05.2013 2 comments 0 trackback
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 アイスマン(Iceman)は、1991年にイタリア・オーストリア国境のエッツ渓谷の氷河で発見された約5300年前の男性のミイラの名であるが、南チロル考古学研究所で仕事をしていた研究者である私は、あるきっかけでアイスマンではなく、アイスウーマンなるものをアイスマン発見場所から。西北に約二百キロの地点で発見した。
 これもまた氷河に埋もれていたのだが、これは大発見であり、まだ三十そこそこの若僧である私は、五十嵐伸二の名を世界に知らしめる事になった。
 私は自分の偉業達成の興奮に酔いしれ、かなり有頂天になった。それはまあいいとして、その発見にはとんでもない付随物が付いてきた。
 このアイスウーマンは驚くべきことに、左腕に時計をしていたのだ。それも現代人のもつ腕時計とほとんど変わらないものだ。なんという不可思議、いやミラクル、ウルトラ、いや、じぇ、じぇ、じぇだろう! 
 もう少し冷静に述べると、その時計は人体と同程度の時間経過を経ている。つまりもう大変な骨董品になってしまっているという事だ。この時計がもし新しい時計なのであれば、誰かの悪戯としか考えようがなく、それはそれで決着がつくのだが、時計が化石化しているから彼女が生きていた時代にすでに時計があり、彼女はその時計を使って秒刻みの時を認識していた事になる。
 この事実に世界中の科学者や考古学者(私を含めて)が眩暈を覚えたのは当然と言える。どうにもこのOOPARTS(オーパーツ)の説明の付けようがないのだ。
 ありとあらゆる調査がされ、ありとあらゆる仮説が打ち立てられた。だがどれも中途半端で証拠に事欠き、論拠は怪しかった。まるで我々は迷路に迷い込んだ、哀れな子羊のようで、誰かにからかわれているみたいで、そのくせ背筋が寒くなった。
 そこで私は私なりの推論を立てることにした。そうでないと私の神経は崩壊しかねないから。そういう訳でその推論をここに列挙しようと思う。

 一、宇宙人説
 これは短絡的ではあるが、最も簡単に説明がつく。つまり今から約5300年前にこの地球に宇宙人がやってきてアイスウーマンに腕時計をプレゼントした。だからアイスウーマンはたぶんそれを時計とも知らないで、飾りの様な気持ちで腕にはめて喜んでいたのではないだろうか? という説。

 二、異次元説
 これは次元の裂け目みたいなものがあり、暗黒エネルギーみたいなものの影響で現代にあった時計が時間と空間の狭間を滑って、過去に行ってしまい、たまたまアイスウーマンがそれを見つけて腕にはめたという説。だから現代から一個の腕時計が消えているはずだ。

 三、古代文明説
 実はいまから約5300年前には現代文明をも凌駕する素晴らしい文明があり、時計はその文明の遺産であり、何かの原因でその文明は滅びてしまったと言う説。

「四、むにゅ、むにゅ、むにゅ、アイスウーマンちゃーん」
 そのとき、うわ言を言う私は誰かに肩をこずかれた。見れば見たことのある連中だった。そして彼らは真剣は顔で私にこんなこと言うのだった。
「五十嵐隊長、大丈夫ですか? やっと目が覚めたようですね。しかし幻想の木の効き目は凄いものですね。我々探検隊がこのアマゾンにやってきて苦労の末、真っ先に隊長が目的の幻想の木を探し当てて、その花の匂いをかいだ途端に倒れられたんだから、我々は心配しましたよ。もうお目覚めにならないのかとも思いました。でもよかったです。で、隊長、どんな幻想を見られたのですか? 伺いたいですね、報道記者たちもそれを知りたがっていますよ」
「……いや、今は言いたくないな」
 私はわざと厳しい顔をして、そそくさと立ち上がり、何事もなかったかのように、ズボンの泥を払った。


                  おしまい
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そういえばフレドリック・ブラウン先生だったかには、雪山で遭難した探検家の前に雪女が現れて助けてくれる短編がありましたな。問題はそこがヒマラヤで、雪女は「雪男のメス」だった、ということくらいで……(^^;)

このショートショートも面白かったですが、ひねってくると思わせておいて「夢オチ」かいっ! と感じてしまったのも事実であります。なんかくやしい(^^;)
2013.12.07 20:28 | URL | ポール・ブリッツ #0MyT0dLg [edit]
ポール・ブリッツさん。感想ありがとうございます。

いや、これのオチはちと期待はずれだったかなあと思います。

あるサイトの「夢」のお題で作ったものでして(^_^;)

もう少し、推理小説的、面白いオチができたら良かったのですがね
m(__)m 失礼しました
2013.12.08 19:23 | URL | 松長良樹 #- [edit]


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