廃墟にて

Posted by 松長良樹 on 26.2014 1 comments 0 trackback
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 県道から脇道に入ると、殺伐とした林道が続いていた。某テレビ局の取材班はその先の今はもう廃墟と化した国立病院に向かって進んでいた。機材を抱えたまま車が入れない道を歩くのは骨が折れる。取材班の表情がいつになく厳しい。
 足元に得体の知れない冷気が絡みつく。そして押し潰されそうな重い気圧。何かが、正体不明の何者かが夜な夜なこの辺りを徘徊するという噂だ……。
 そのなにかをテレビカメラにとらえたら大成功だが、とらえられなくても充分そこまでのプロセスだけで週末の恐怖特番は成立する。
 なにしろ可愛いアイドルが同行しているし、霊能者の先生だって白装束で、時たま祈祷みたいな言葉を唱えながら歩いている。口はあくまで一文字に引き結んだままで。
 だがアイドルの凛にいつもの愛くるしい笑顔はない。マジに怖いのだ。この番組の出演を何度も断ったのだが、辣腕プロデューサーの新城に押し切られてしまった。
「もう少しで問題の病院跡に着くぞ。充分に気を付けて。建物は相当老朽化が進んでいるから。壁や天井が崩れる可能性だってある。くれぐれも事故だけは起こさないように!」
 取材班のリーダーが皆に注意を促していると、いきなり白髪の霊能者の先生が
「しっ!静かに!」
 と叫んだ。「何かがいる」霊能者は呻くように言う。取材班が固唾を呑んで前方の闇を見つめると、廃屋の壁を背に真っ白い顔をした少年が立っていた。そして陰気な顔をしてこちらをじっと凝視している。
「で、でたーっ!」
 取材班の一人が大声を出した。恐怖にかられて、あわてて逃げ惑った。アイドルは発狂したみたいに甲高い声を出して泣いた。そして石につまずいて転がった。可愛い泣き顔が怖い。
 そこで怒鳴ったのがやっぱりリーダー。
「馬鹿野郎!! 慌ててないで早くカメラ回せ、すごいぞ!! おい、これは本物の超スクープ映像だろう!! 他局を出し抜けるぞ。ライト照らせ」
「いやライトはだめです。霊が怖がります! 消えたらそれっきりかもしれませんよ!」
 そう言うカメラマン。
「そうか、わかった暗視カメラ使え。忘れていた。はやいとこだ」
「先生!! お祓いしてください。ヤバイですよ。これは」
 他の誰かがそう叫んだ。
「お祓いなんて後にしろ! なにがなんでもあの少年を撮るんだよ」
 リーダーのプロ根性がそう叫ぶ。
「もうやだー!! もうお家に帰りたい!!」
 アイドル凛の悲痛な叫び。
 ああ、少年はそのままで青白い顔を動かさない。そして無言でこちらを指さす。
 パニックの中で繰り広げられる撮影。


 翌日、地元の新聞にこんな記事が載っていた。

 有名な霊感少年が、廃屋と化した病院跡で幽霊達に遭遇したと証言。
 尚、霊の数は複数で少年によれば昔、某テレビ局の取材班が廃墟を撮影していたところ、廃屋の天井や壁が崩れ、不幸なことに全員生き埋め同然に亡くなり、その霊達であったと言う。
 霊能者の白鳥氏や、アイドルの凛もその霊たちに混じっていたと言う事だ。


 追記、少年によればそのテレビ局の取材班は廃墟を何者かを探して、今も彷徨っているという事である。近々にその少年の証言を基にした、霊能特番が放映される予定。

                      おしまい
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2014.04.05 06:21 | URL | つねさん #- [edit]


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