ああ、結婚

Posted by 松長良樹 on 30.2014 4 comments 0 trackback
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 わたしみたいないい女がなぜ未だに独り身なのか、正直わたしにも理解できない。全く世間の男達はなにを考えているのだろう。もしかしたらこのわたしを見た男達はわたしのあまりの美しさに、ビビッて声をかける事さえ出来ないのだろうか? そうだとしたらわたしの美貌も少々罪かもね。
 でも、わたしは結婚がしたいんだ。親もわたしの結婚をせいているようだし、世間体というものを気にかけているのだろう。うるさいけど、もうわたしも三十を少し過ぎたから仕方がない事かも。
 相手はなにも王子様じゃなくていい。ちょっとだけイケメンで、年収はたかだか一千万あればいいし、身長だって180センチあればいい。これはわたしの身長が170センチだから仕方のない事だ。
 そんな折にネットサーフィンをしていたわたしはあるサイトを見つけた。そのサイトの発見は偶然か必然か、まあそれはどうでもいいけど、とにかく、そのサイトは真っ黒な画面に、あなたの理想の恋人を紹介しますと金の文字ではっきり書かれていた。
 何か怪しげな感じはあったが、わたしは半信半疑で入場のボタンをクリックしていた。有料だったら即、退場のつもりだったけど、開いた画面にはさらに興味を惹くような文言。それはこんな風だった。
「いままで異性に縁のなかった貴女……」
 うっせえよ。わたしはそう思いながらも文章を読まずにいられなかった。
「世界のどこかに必ず貴女に合った人がいます。理想の人でありますし、その人と一緒にいるだけであなたは幸福感に包まれ、心底、満たされます。あなたはいったい何のために生まれてきたのでしょうか? 仕事の為、親の為? そんな訳がありません。あなたは理想の恋人にめぐり逢う為にこの世に生を受けたのです」
 そのときわたしの心がズキンと心地よく痛んだ。無意識にうなずくわたし。そうか、そうよね。そうかもしれない。そう思う。
「このサイトは貴方の様な人の為にあります。素晴らしい方なのに縁に恵まれない貴女のような素敵な人の為に。怪しいと思われるのは当然でしょうが、どうか自分自身の為に少しだけ勇気を出してみてはいかがでしょう」
 うまいこと言い過ぎで怪しい。元来が用心深いわたしは×でサイトを閉じようと思ったが、すかさすお気に入りにしておく。いじらしいわたし。その時はそれで閉じてしまったが一週間もたたないうちに、そのサイトをまたみてしまった。
「幸福な結婚生活は向こうから歩いてこない。貴女が貴女自身の為に掴み取るのです」
 いきなりの文言に驚くわたし……。そうかもしれない……。と暗示にかかりやすいわたし。思わずログインしてしまう。

「あなたの理想の人を紹介しましょう。ほんの少しの勇気ですぐにでも貴女は幸せというものが掴める」
 わたしは入会のページを読んでいた。システムと費用と言う蘭だった。そこでわたしは費用が六十万かかる事、だがその報酬は相手に実際に会い、すべてがうまくいってからの後払いという事、途中でいつでも退会が出来る事、悪くない条件だった。いや、料金が後払いと言うのはおいしい。実はわたしは結婚相談所に行こうかなどと考えていたので、心が動いた。
「まず、あなたのお名前、身長・体重、出身地、血液型、生年月日、それをお教え下さい。そうすればわずか数時間で、貴女にあった方をご紹介しましょう」
 それを読んでわたしは少し怖くなった。個人情報を盗まれちゃうんじゃないかという恐れ、疑念。しかしわたしは一週間、仕事も手につかないほど悩んだ末、その情報を打ち込んだ。と、たちまち画面に現れる文字。
「あなたに合う人が一人だけいます。すべての要素で貴女にとてもお似合いな方です。名を田中さんといい、今年で三十五歳になります」
 胸がどきんとする。どんな人だろうと思う。顔が見たいと思う。
「あした、午後三時、その田中さんは貴女のよく知るK公園のベンチに腰かけています。そこで彼にお逢いなさい。彼についての情報はご自分で聞きだしてください。それの方が恋愛の醍醐味が味わえるでしょう。何も心配しないで。費用は彼と結婚が決まったときの後払いでよろしいですから」
 不安と期待がわたしの心の中で交差する。もどかしい想い。相手はお金持ちの御曹司? それとも映画スター? それとも……。
 翌日着飾って公園に出かけるわたし。そしてその公園のベンチにいる人を見てあまりの驚きで息も止まりそうになった。そこに居たのは汚いホームレスの男。わたしは騙されたのだと思った。自分の甘さが腹立たしくて、悔し涙さえ溢れる。しかし足早にそこを立ち去ろうとするわたしに男は声をかけてきた。
「ちょっと待って。あなた、山田さんですよね。サイトで僕を紹介された。僕の話を聞いて下さい」
 わたしは無視した。でもちょっとだけ振り返ってみると、彼の視線は何とも悲しそうに私を追いかけている。その瞳にわたしはなぜか惹かれていた。
 彼の話を聞くと、彼は事業に失敗してこうなってしまったが、もう一度事業を再開するつもりだと言う。経歴を聞いてみるとそれ相応なものだった。

   *  *

 今のわたしは彼にかけている。そして彼に援助している。彼が成功者となってくれるのももう間近なのかもしれない。だけど本音は彼がひたむきに頑張っている姿を見るとわたしの心は満たされる。もし仮に彼の事業が成功しなくたって、わたしは彼を見放したりはしない。愛しているから。
 はやくわたしは彼と結婚したいけれど、彼が僕の事業が軌道に乗るまで待っていてと言う。そうすれば親だってきっと納得してくれるはずだ。

                     おしまい

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これ、ラブ・ストーリーだと思って読めばいい話ですけれど、

「詐欺師に引っかかった女」の話に見えてくると、

ものすごく怖い想像をしてしまうんですが……。
2014.05.05 19:48 | URL | ポール・ブリッツ #0MyT0dLg [edit]
ポール・ブリッツさん。お読みいただきありがとうございます。

おっしゃるとおりですね。

まあ、いいお話という事で(^_^;) 三人称にすれば騙されたというオチも生きてくるかもしれません。その場合はもうすこしひねらなければね。作者の力量不足をお許しください(--〆)

2014.05.06 18:28 | URL | 松長良樹 #- [edit]
ブログ村よりやって来ました。
小説ブログをはじめたばかりです。
とても惹きつけられる文章で、勉強になります。
よろしくお願いします~
2014.05.12 21:51 | URL | はる9001 #pYrWfDco [edit]
はる9001さん。初めましてコメントありがとうございました。

惹きつけられたと聞いて嬉しく思います。

未熟ものです。こちらこそ宜しくお願いします。

2014.05.13 18:48 | URL | 松長良樹 #- [edit]


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