感傷的宇宙航海日誌

Posted by 松長良樹 on 04.2016 0 comments 0 trackback
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 人類文明の飛躍的躍進。宇宙空間を自由航行するテクノロジーを得て、宇宙世紀の幕開けは思いのほか速くやって来た。そしてこの記録は優秀なクルーによって正確に、あるいは支障のないようにしたためられた。その驚愕の内容をここに明かそうと思う
  20XX年 03.23 T.P記述

 地球から13億光年はなれた天体で我々は初めて知性のある生命体を発見した。
 だが知性があるといっても人類に比べればまだまだ劣っていて、言葉はあったが文字がなかった。そこで我々は実験的に彼らに読み書きを教え、安定した生活の基盤に農業を伝えた(この当時は宇宙無干渉の原則は存在しなかった)そして司令部もあえて反対をしなかった。彼らの姿かたちは人間に似ていて、とても呑み込みの早い勤勉な民族であった。
 そしてキャプテンの独断で彼らに国を作らせ、政府を置いた。しまいには資本経済が導入され、星はにわかに活気に溢れた。そこまでを数年の滞在でやってのけた我らクルーたちは、彼らの感謝の言葉を後ろに聞きながらその星を後にしたのだが、数年後にその星を再度訪れた時、肝をつぶすほど驚かされた。
 宇宙船が彼らに攻撃を受けたのである。「まさか大砲で撃たれるとは思わなかった」は、キャプテン ジョン・岡田の苦々しいコメントであるが、その時の彼らは内乱の状態にあった。それというのも彼らがもともと崇拝していた、アードの神の一派と地球から持ち込まれた新教徒(クルーの一人に信者がいた)とが対立し、もはや抜き差しならない戦争へと突き進んでしまっていた。
 これにはえらく心を痛めた様子のジョン・岡田であったが、そのまま帰還したわけではない。
 彼は気でも違ったのだろうか、今も真意が判らないが、彼は星の安定と統一を願うあまり、国家の総書記を名乗り、国を支配してしまったのである。その時に彼に反抗した他のクルーの殆どが粛清され、二人が彼に忠誠を誓った。
 私はジョンに忠誠を誓ったと見せかけて、後で星を単独で脱出するのに成功した。私はこのことを直ちに地球司令部に知らせ、ジョン岡田は世界の痛烈な批判の的となった。帰還すれば逮捕、裁判は免れないものだったが、彼はついに帰らなかった。
 この時に制定された宇宙無干渉の原則は今も守られているが、独裁国家をつくり、星を統一したジョン・岡田がその後、どんな運命をたどったか、星との交流をまったく断絶してしまった今となっては計り知れない。
 一説によると彼は不老不死になり、地球の征服を企んでいるというが、私はこのバカげたデマを信じていない。
 しかし、ジョンの優秀さを身近に知る私は夜空を見上げるたびに若き日の彼を思い出し、とても感傷的な気分になる。

                                        つづく
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