感傷的宇宙航海日誌 Ⅱ

Posted by 松長良樹 on 11.2016 0 comments 0 trackback
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「宇宙の旅を長く続けていると、頭が変になりそうな瞬間が何度も押し寄せてくる」
 このコメントはある宇宙飛行士が過去を振り返って残したものだが、真実の宇宙飛行というものが決して楽しいものでないことを如述に表している。宇宙の暗黒は人間に途方もない何者かの存在を予感させ、いくつもの『なぜ?』を連鎖的に突き付けてくる。
 20XX年 06.01  S.S記述

 我々はさまよっていた、といっていい。宇宙船がトラブル状態にあり、予定のコースを大きく外れてしまったのだ。しかたなく我々は最短距離にある惑星に不時着することになったのだが、その惑星での出来事をここに記しておこうと思う。
 その星に降り立つと、その大気構成が驚くほど地球に似ていた。しかしながらすぐに宇宙服を脱ぐこともできないので、慎重に観測を重ねてわずか三日で我々は宇宙服を脱いだ。
 ところがそこでクルー全員がめまいに襲われしばらく意識を失った。18名のクルーが同時にである。後になってもその原因ははっきりしなかった。幸いなことに全員多少の頭痛を残して意識を回復でき、我々は宇宙船の修理と惑星の観測に明け暮れた。
 惑星の大きさは地球より3パーセント大きいくらいでクラーク数まで地球と酷似していた。そして我々は宇宙船を中心して、行動範囲を徐々に広げていったのだが、ある時クルーに一人が丘の上から眼下に広がるコロニーを発見したのだ。

 その時の衝撃と言ったら計り知れない。それは荒涼とした惑星の土地にポツンと異質な建造物が佇んでいて、クルーの全員が興奮状態になった。我々は他知性体とこんなふうに遭遇する奇跡を複雑な気持ちで迎えようとしていた。
 が、我々はとても慎重だった。この星に住む生命体なのか、それとも他の星からやってきた宇宙人なのか、それを探らなければならない。私などはすぐにでもそこに行って挨拶でもしたい心境になったが、キャプテンは実に冷静だった。むやみに近づくのは危険だとして二人のクルーだけをコロニーの偵察に差し向けた。望遠カメラによって様子を見ようというのだ。そして我々はそれを見た。

 そして全員が鳥肌を立たせ、めまいがしたのを憶えている。
 それは実に小規模のコロニーで地球の民家と大差がなかった。そして窓越しに金髪の女が外を見ていた。それがクルーの一人ケイト・コナーに生き写しなのだ。だから最初にそれを見たオオノというクルーはそれがケイトだと思ったのに違いないのだ。
息を殺してオオノはコロニーの内部の様子を宇宙船に送ってきたのだが、そこには我らクルーの全員がいた。オオノはもう一人のオオノを見たのだ。
 皆が絶句したまま、顔を見合わせ、言葉がなかなか出てこなかった。クルーたちはキャプテンの指示を待つ以外すべがなかったが、キャプテンでさえ判断ができないでいた。
 そして二人を宇宙船に帰還させたキャプテンは真相も確かめないまま、地球への帰還命令を出したのである。
 今でも、私は仕方がなかったと思っている。我々にもキャプテンにも真相を確かめる勇気がなかった。たぶん真相を確かめようにも精神が錯乱してしまったのだと思う。
 後でケイト・コナーはあの時見たものは我々の未来の姿なのだという解釈をしたが、コロニーをあの場所に作るには資材がなかったし、辻褄が合わない。キャプテンは極度の疲労がわれわれに集団幻覚を見させたと言っているが、彼は名誉ある地位を棒に振り、宇宙開発センターを即座に退職している。

 しかし私は心ひそかに思うのだ。もう一度あの星に行き真相を確かめてみたいと……。

                                        つづく
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Category : SF小説


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