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―分身―

Posted by 松長良樹 on 21.2010 2 comments 0 trackback
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 この能力に恵まれたのは、東京都に住む若き報道記者だった。名をケンイチと言う。報道関係の仕事はあまりにも忙しく、極度の煩雑さがケンイチにこの能力を獲得させたものと思われる。
 体がもっと欲しい……。というケンイチの切なる願いが天に通じたのか、或いはケンイチがそういうDNAを最初から持っていたのか、はたまた突然変異なのか。その辺は全く分かっていない。不明のままなのだ。
 後年ケンイチは科学者達の恰好の実験材料となるのだが、その話はひとまず置いておき、分身の結果ケンイチがどうなったのかだけ述べよう。
 ケンイチは自分を三人に増やした。その内訳を言うと、現場リポーターに一人。事務所での記事づくりが一人。夜討ち朝駆け用に一人。
 ケンイチは自分を三倍にする事で仕事を精力的にこなしていった。
 しかし予想外の困った事態に直面した。
 ケンイチがもう一人のケンイチにこう言ったのが事の始まりだった。
「ケンイチ、僕のために一生懸命働いてくれて本当にありがとう。とても君が僕の分身とは思えないよ」
 この言葉に意外な返事が帰ってきた。
「あれっ。おかしな事を言うね。礼を言うのは僕だよ。君が僕の分身じゃないか」
 この会話をきっかけにして事は収集が着かないほどもつれた。
 三人が三人とも自分こそ真のケンイチであり他の二人こそ分身だと信じていたのだ。こうなると仕事どころではなくなった。三人ともノイローゼになってしまった。医者に行けば三つ子なんでしょと言われるし、両親でさえ見分けがつかない。
 仕事が手に付かなくなった三人は一時仕事から離れた。三人で田舎に帰り、誰が本物のケンイチであるか真剣に考察した。しかしいくら悩み苦しんでも、結局らちがあかない袋小路であった。
 三人はいつしか考えるのに疲れた。そしてこの事態をいくら憂いても仕方がないと思いはじめた。
 挙句のはてに彼らは突き抜けた。そして ~別に誰でもいいじゃない~ という安易な結論に達し、三人は仕事に復帰した。そしてまさに超人的に仕事をこなしていった。
 しかし報道部は甘くなかった。給料も三倍になったが仕事もまた三倍に増えていたのだ。結局ケンイチは今も極めて忙しそうに仕事をしているらしい……。

                      おしまい。
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たいていの場合、こういう選択に関するものは、淘汰されて大団円を迎えるってのがオチなんでしょうけど、そこをあえて外すのがいいですね。
自分が3人もいたらどうなっちゃうんでしょう?
一度でいいから、もうひとりの自分に会ってみたいもんです。

>らちがあかない袋小路
この落語チックな感じが好きです。
2010.11.22 15:02 | URL | ヴァッキーノ #- [edit]
ヴァッキーノさん、コメントありがとうございます。
これは落語です。S&Sの中には落語として寄席で通用するものも
沢山あります。また謎かけもS&Sに共通する要素を持っていると思っています。

S&Sとかけまして、納豆ととく、その心は練って味がでます。なんつって!

2010.11.22 23:13 | URL | 松長良樹 #- [edit]


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